厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(2017年1月20日付、以下「ガイドライン」)を受けて、職員証による退勤管理が今日(10月1日)から開始されます。
組合では、6月25日に当局の説明を受けて以降、市労連として「質問及び申入れ」を提出し、断続的に折衝を継続してきました。当局からは、①出勤管理が導入された際の「勤怠管理による労働強化(管理強化)に用いない」という労使確認の経過の上に立った運用とすること、②「長時間労働是正とサービス残業防止という導入の趣を踏まえて」適切に対応していく旨の、おおきく2つの態度が示されています。
よって市従は、個別に問題が生じた場合に、その是正を求める中で運用の改善を図っていく立場を確認して、導入と運用の開始を了解したところです。職場で、不払い労働・長時間労働なくすたたかい、声を挙げるための武器として活用されることを呼びかけます。
運用の変更点と留意点
職員は、出勤時と同様に、退勤する際にカードリーダーへ職員証をかざします。カードリーダーをかざすのは、職場から退出するときです。終業時ではありません。
これによって、出退勤時間と、庶務事務システムで申請・決裁されている超過勤務実績との乖離があるときに、責任職が職員に確認を取ることができるようになります。超過勤務の入力漏れがある場合には、本人が修正することで、不払い労働のなくなることが期待されます。なお、責任職が確認するのは、概ね30分以上の乖離がある場合を想定していますが、これは超過勤務の基準時間になるものではないため、責任職には30分未満でも適切な対応が求められています。(「IDカード(職員証)による退勤管理の導入に関するQA」参照)
黙示の指示でも労働時間
職員証による出退勤記録は、いわゆるタイムカードではありません。よって、職員証によって記録された時間をもって、申請・決裁なしに超過勤務実績になるものではありません。不払い労働の根絶にとっては、不十分な対策のようにも見えます。しかし、タイムカード化は、やんごとなき事情での遅刻も許されないような管理強化へと道を拓くおそれもあることから、慎重になる必要もあります。
大事なことは、労働者が不払い労働に甘んじないで、正当に賃金の支払いを求めることです。明示的な指示だけでなく、黙示的な指示により業務を行う時間も労働時間です。ガイドラインは、そこに、業務に必要な準備行為(着替え等)や後始末(清掃等)も含むとしています。不払い労働に敏感になりましょう。
組合がない自治体まるごと違法が横行
たとえば9/16の神奈川新聞で、時間外手当の支給に上限を設け、長年(少なくとも30年)にわたって不払い労働を慣例にしていた二宮町の違法が報道されました。労働組合がないために、法令を遵守すべき自治体当局が、市民のために働く職員の善意に付け込み続けてきたのです。
ガイドラインでは、労働時間を適正に把握する責務は使用者にあるとされていますが、労働者のたたかいなしに、使用者まかせで不払い労働はなくならないことを如実に物語っています。
組合員の皆さん、出退勤記録を武器として、当たり前の働くルールが守られる社会をつくる一歩を踏み出しましょう。