【第163山】三浦半島&鎌倉、台風後の山模様「嵐が来りて樹を倒す」

 立て続けに襲来した台風15号と19号は、三浦半島と鎌倉周辺の山々にも甚大な被害をもたらした。戦後に宅地開発などが進み、山と街の構図が現在の様に定まってからでは最大の被害であり、今後の同地区山エリアの防災を考える上でも貴重な試金石になるものと思う。

 狭い三浦鎌倉エリアだが、被害程度にはかなり温度差がある。三浦半島の中核を成す横須賀市の山間部はそれほど大きな被害はなく、登山ルートも殆ど閉鎖されることなく復旧している。ところが北に寄るに従い被害の程度が増し、特に鎌倉周辺が酷い。

天園や朝夷奈切通といったハイキングのメッカでも、被災から1か月以上経っても閉鎖されたままなのである。鎌倉近辺のハイクコースが今のスタイルになってからでは初の惨状だろう。

 現地で観察してみると、樹種によって倒壊の程度が著しく異なることに気づく。当地の本来の植生である照葉樹(テカテカした広葉を持つ、タブや椎など)は倒れていても単独の場合が殆どで、なんとか通行は可能である。ところがスギ植林帯の倒木はこうはいかない。

所々で数十本単位の集団でまとまって倒壊し、様々な角度で折れ重なっているから、まるで堅固なバリケードのようで通行を許さないのだ。倒木を伐って整理したいところだが、跳ね返りが危険なため、伐採のプロに任せるほかなく、復旧が余計に遅れてしまう。本来の生態系に逆らって人為的に植林した樹が、自然の猛威にはもろいことを如実に示してくれている。

 三浦鎌倉エリアの被害が主に暴風によるものであったのは、まだマシであったろう。時間は係っても倒壊した樹木さえ整理できれば、ほぼ旧に復するのであるから。一方で水害が主因だと山は大荒れになる。山肌は崩れ谷は埋まる。山の体系そのものが変貌してしまうのである。その意味では19号で水害の著しかった箱根や丹沢の登山道は、遥かに深刻なダメージを受けたに違いない。

 近年の台風の深刻化は地球温暖化の反動である。此度の災害は、温暖化対策に及び腰になってしまったニッポン政府、そしてニッポン人への天の啓示ではないかと思えてしまうのだ。被害冷めやらぬうちに出かけてみて、そんな実態を肌で感じ取ってみては如何だろう。

朝比奈の山道でスギの倒壊   ( 上の画像をクリックすると大きく表示します )

◆参考地図・ガイド ◎東京新聞:「鎌倉&三浦半島 山から海へ30コース」