【第166山】与那覇岳 503m、嘉津宇岳 452m(沖縄県)静寂の山頂と人気の山頂と

 沖縄に山?と思われるかもしれない。しかしニッポン国では、ごく僅かな例外を除いてどんな小さな島でも山地形で出来上がっている。全長が100㎞に及ぶ沖縄本島にも、山脈に多くの峰が連なる。その最高峰が与那覇岳だ。本島でも北部に位置し一帯は深いヤンバルの森の中だが、林道が山上まで延び登山ルートも整備されているので、結構気軽に登ることが出来る。

 立派な看板のある登山口から前半は林道を歩く。巨大シダ樹などあって亜熱帯のムードが存分に味わえる。後半は狭い山道となるが、笹に覆われた照葉樹林となり、あれどこかで見たような光景?既視感に捉われる。なんだ、三浦半島の山風ではないかと気づく。もちろん笹の種類など違うのだが素人目には区別がつかないし、樹についてはスダジイ(椎類)が主で、これは三浦と変わらない。この事が意外な発見といえば発見。残念ながら山頂は展望ゼロでそのまま往路を戻る。

 さすがにこれでは沖縄まで来た甲斐がないので、もう一山、合わせ技一本でお勧めしたいのが中部の本部半島にそびえる嘉津宇岳である。こちらは名護の街に近く交通の便も良く、与那覇岳よりずっとお手軽に登れる。広い駐車場やトイレもある立派な登山口から、よく整備された道が続く。森のムードはやや亜熱帯調といったところか。山頂部は石灰岩系の岩山になっているので、展望は与那覇岳とは真逆の360度。本部半島の付け根に位置するので、3方に海が見え、本島の山脈の連なりも手に取るようにわかる。

 とにかく手軽な山なので地元の人も気楽に登ってくる。どうやら在沖米軍のレクレーションにも御用達のようなのだ。休日ともなると見るからに屈強な海兵隊員とその家族が次々と登ってくるのに驚かされるが、陽気でフレンドリーではある。そういえば海以外の眺めで目を引くのは北側の赤茶けた地肌剥き出しの山々。一帯は石灰岩質なので、セメントの採掘が盛んに行われていて、下界は満載のダンプが行き交う。米軍基地移設で揺れる辺野古はここから近い。人気峰といえども沖縄では基地問題抜きには語れないのである。 

◆おすすめコース
与那覇岳往復2時間、嘉津宇岳往復1時間(初級向け)※ハブが心配だが、幸いハイカーの被害は殆ど聞かない。ただしヤブには踏み込まないように。

登山口からの嘉津宇岳。山頂部は石灰岩 ( 上の画像をクリックすると大きく表示します )

◆参考地図・ガイド ◎「地理院地図」で検索、必要エリアをダウンロード