ニッポンは山国で全国津々浦々まで山地が占めているから、大都市近郊でも結構複雑な山地形が見られる所が多い。全国の大都市で今最も元気な福岡市は、前面が海で幾つかの島が浮かび、本土側も複雑な海岸線が続いている。
福岡市から博多湾を挟んで蟠踞するのが糸島半島だ。大都市&半島の関係では、横浜市&三浦半島と何かと共通項があり、ある意味ライバル足り得る存在といえる。まず都心部から半島中心までの距離がどちらも似通っている。面積は三浦の方が一回り程大きい程度、海岸線の形状もどことなく似ている。
歴史的には邪馬台国時代に伊都国があった糸島の方が古さで分があるが、元寇防塁が残されている点、三浦との鎌倉期の縁を感じる。
ハイキング対象としての山対決はどうだろうか。そこでとりあえず、海の眺望に優れしかもお手軽な一山として、立石山に登ってみる。半島の北西端、海にせり出すような岬近くの一峰だから、半島トップの展望が期待できよう。海岸線からのルートもあるが、夏場などは山側の峠まで車で上がってしまえば、さほど大汗をかかずとも山頂に立てる。峠から標高差僅か70mほどで最初のピークに着く。岩が露出していて遮るものなし。玄界灘を正面に、足元の唐津湾と遠く博多湾、見通しが利けば壱岐島も。周辺の海岸線が複雑だから、岬や湾の入り組む様子が実に楽しく眺められる。
中でも印象深いのが芥屋の大戸と呼ばれる、岬先端から突き出す大岩峰だろう。立石山本峰へは僅かに下って登り返すが、こちらは山頂標識があるものの展望は樹間からチラホラ程度。先の岩ピークと併せて登頂達成とするといい。
では山対決の判定は?標高200m台がやっとの三浦に対し、糸島最高峰の可也山は筑紫富士とも呼ばれ365mあるし、200mクラスの山が目白押し。名前も火山、彦山、毘沙門山、そして蒙古山など多士済々、海岸すぐそばで高いから海の眺めは三浦を凌ぎ、福岡のハイカーが羨ましいくらい。そのまま糸島勝利でもいいが、三浦には源流部や細密地形、地層の複雑さなど単純に計上できない面白さがある。まあ、ここは両者痛み分けとしておこう。
◆おすすめコース
峠―立石山往復(30分:初級向け)※半島内の主だったピークにはルートが付いているので、見当を付けて登ると良い。
◆参考地図・ガイド ◎国土地理院2万5千分の1地形図をダウンロード。「地理院地図」で検索。