横浜市従の加盟する労働組合の地域組織「神奈川労連」とかながわ産業労働調査センターが発表した「2020年版 国民春闘・神奈川版資料」(ビクトリーマップ)を見て驚かされました。ビクトリーマップは、県内に500人以上の従業員がいる企業のうち、財務諸表が入手可能な100社について状況を調査したものです。
前年比3兆円超の増
対象となった企業の内部留保は98兆3298億円で、1年間に3兆2205億円(3.39%)増えました。
100社のうち71社が内部留保を増やし、29社が減らしていますが、仮に全体の内部留保を従業員1人あたりで割り返すと、前年比63万円増で、2107万円にも上ります。
個別企業では、東芝の8839億円をはじめ、ソニー、武田薬品工業、東京電力、富士通、JXホールディングス、東日本旅客鉄道、セブン&アイ、JFEホールディングス、キヤノンの10社が1千億円を超えて増加させています。
このうち、東芝は1万2千人以上、富士通は5千人以上、キヤノンも2千人以上の従業員を減らしています。労働者の雇用を奪いながら労働者が汗を流して産んだ富を内部留保として溜め込む資本の強欲さが垣間見えると言えるでしょう。
労働者一人あたりの内部留保の上位には、日産自動車や日本郵政のように不祥事を起こしている企業も名を連ねています。
ところで、神奈川労連によれば、100社の労働者すべてに月例給を1万円賃上げし、ボーナスを夏冬で5か月与えたとしても、取り崩す内部留保は、たった0・8%だけだそうです。そして、100社の労働者全員に1万円賃上げした場合の神奈川県内の経済への波及効果・生産誘発額は、総額572億円となるそうです。
調査結果から、神奈川労連は、膨大に滞留している大企業の内部留保(利益のため込み)を賃金や下請け単価に活用すること、社会保障などを充実させるためにも、課税して社会に還元することなどを求めています。
ちなみに県内の全労働者に1万円賃上げした際の、生産誘発額を試算すると総額7790億円。賃上げは、地域経済に好循環を与えます。
働かざる者へ大盤振る舞い
さて、賃金が抑え込まれる対局で増えるのは株主配当。合計で2兆8758億円が株主配当に回りました。前年比3657億円増。14・6%もの増加。親会社分だけでも株主配当を全連結従業員に回せば、1人62万8千円が支給される計算です。
積みあがる富は労働者の手に還らず、働かざる者のもとへ。分配構造が歪み過ぎている