横浜市における中学生の昼食。住民の要求を反映し、市教育委員会は「令和3年度以降の中学校昼食の方向性について(案)」を3月16日市会こども青少年・教育委員会に示した。学校給食法に位置付けた選択制デリバリー型給食の実施を目指すという。
鯉渕教育長は、「小学校のような自校方式・親子方式など学校で調理する方式での中学校給食の実施を検討することは考えていない」と言い、「実現可能な選択肢はハマ弁のようなデリバリー型の昼食しかない」と当局の考えを述べた。現在のハマ弁製造業者に加えて参入企業を増やすことで、喫食率30%まで対応可能だと説明している。
選択制のデリバリー型給食とはいえ、学校給食法に位置付ける給食とすることで実施主体が横浜市となり、責任の所在が明確になることは長年の住民要求を反映した政策の前進だと歓迎したい。併せて、献立作成や食材の企画策定などについても教育委員会が直接かかわることになるという。ところが、「当該学校に在学するすべての児童又は生徒に対し実施されるものとする」と定める学校給食実施基準を「努力目標と考えて」、「学校給食法に位置付けますと、少なくとも希望する生徒さん全員に提供できなければならない」との認識だと答弁している。全員喫食の給食提供に背を向けて独自解釈で行政責務を矮小化する有様だ。
この「案」の策定に先駆け、市教委は、生徒や保護者、教職員らを対象にアンケートを実施した。「アンケート結果からデリバリー型給食への保護者の期待が高」いと鯉渕教育長は言う。
どのようなアンケート内容だったのか? 委員会の中で「デリバリー型以外の方式については提示されていたのか」と古谷靖彦市議(日本共産党)が質問すると、「デリバリー型以外の方式については記載してございません」との答弁。藤居芳明市議(立憲・国民フォーラム)が、恣意的なアンケートにより「生徒と保護者のニーズをちゃんと把握できていない」と指摘するも、「私ども行政マンでございますので、行政上、これだったらできるというものでなければ、安易にアンケートをとることはできないと思いまして、このアンケート内容となっています。そのなかで、高い割合でデリバリー型給食を求める声があることがはっきりしました」と居直る始末だ。
荒木田副市長の答弁も考察に乏しい。「子育て世代に選んでいただける都市横浜を実現していく」と言う一方で、「給食があるかないかだけで、住む都市を選ぶことはないと思」うと。本当にそうだろうか? 多くの市民が生活を軸に、居住地を選択しているのではないだろうか。「給食が充実しているから世田谷区を選んだ」と子どもの進学とともに転居したり、「いつまでも横浜は中学校給食が始まらないから」と川崎へ越していった家族を友人に持つ筆者はこの答弁に絶句した。事実、東京都区部や県央、湘南地域への子育て世帯の転出超過は続いているではないか。この数字だけを見ても「給食があるかないかだけで住む都市を選ぶことはない」と、どうして言えるのだろうか。荒木田副市長には市民の声が届いていないばかりか、実態を掴む能力もないのではないかと疑いたくなる。
当局が難しいと言う自校方式と親子方式を組み合わせた学校調理方式。当局資料によれば、145校ある中学校のうち、70校で実施が困難とのこと。つまり、75校では実施可能だということだ。このことは古谷市議も指摘している。参入企業を増やした選択制デリバリー型給食で供給可能な30%をはるかに上回る50%以上の供給が、学校調理方式ならば可能になる。
様々な方式を組み合わせれば、全員喫食の中学校給食は実現できるのではないか。