地域別最低賃金の審議が間もなく始まります。
最低賃金制とは、賃金の最低限度の額を決めて、その金額以下で労働者を雇うことを使用者に禁止するものです。労働組合が闘争の課題とする最低賃金には「法定最低賃金」と「企業内最低賃金」、そして公契約条例に基づく「公契約最低賃金」という3つの種類があります。
「法定最低賃金」は最低賃金法に基づいて国が定めるもので、「地域別最低賃金」と「産業別最低賃金」とに分けられます。
「企業内最低賃金」は、企業と労働組合の間で「協約」を結び、組合員がそれよりも安い賃金で働かされることのないように決めるものです。適用範囲は企業内にとどまりますが、労働組合が産業別組織の闘争に位置付け、使用者に協約締結を迫ることで、法定最賃の産業別最賃を引き上げる情勢を開く効果もあります。
「公契約最低賃金」は、公共事業を受託した事業者に、その事業に携わる労働者へ自治体が求める賃金を確保するよう規定するものです。公契約最賃は法定最賃よりも高く設定されます。低価格競争とそれを可能にする雇用の非正規化や不安定化を放置せず、公務部門を担う民間労働者たちの賃金を保障することは、公共サービスの質を担保することにつながっています。
さて、先に述べた地域別最賃は、労使らが参加する「最低賃金審議会」で議論のうえ、各都道府県の労働局長が決定します。
2017年3月28日に働き方改革実現会議で決定された「働き方改革実行計画」には「年率3%程度を目途として、名目GDP成長率にも配慮しつつ引き上げていく」と明記されています。この3年間、最低賃金は3%ずつ引き上がり、全国加重平均で901円となりました。
6月3日におこなわれた最賃をテーマとした全世代型社会保障検討会議で安倍首相は、新型コロナウイルス感染症拡大の経済への影響を理由に、「今は雇用を守ることが最優先課題だ」と述べました。全国平均で時給1000円を早期に達成するとした方針は中期的に維持するとしながらも、日本商工会議所三村明夫会頭の「引き上げは凍結すべきだ」との主張に同調。「雇用、経済への影響は厳しい」と。
一方で大企業の内部留保は第二次安倍政権発足以降、100兆円を超える富が積み増しています。大企業の内部留保を正しく活用すれば、下請け単価の引き上げや労働者の賃上げに資金を回し、十分に雇用を守ることもできます。
コロナ後の社会へ展望ひらくために、今年の最低賃金の引き上げが重要です。最賃引き上げを人事院勧告につなげ、市の人事委員会勧告へ、そして春闘へと続け、また夏の最賃へとバトンを渡す賃上げサイクルの定着が求められています。