ダイジェスト21春闘方針(案) 財界戦略と対決する労働者・住民の共同を

21春闘闘争宣言行動(経団連会館前、1月15日)

1月7日、中央執行委員会は「横浜市従2021年国民春闘方針(案)」を提案しました。ここに掲載するのは、機関紙編集部が方針案をもとに作成した討議資料です。なお、この討議資料には、方針案の提案後に変化した情勢を反映したために、一部に方針案と内容の異なる表現があります。

くらし優先の新しい社会へ―新型コロナ危機を克服する

憲法守り活かす運動広げ、生活優先の政治実現めざす①

新型コロナ禍での萎縮傾向を克服し、今こそ労働組合の真価を発揮し、「ポストコロナ」の社会転換へ、生活優先の政治実現へ、社会運動を前進させましょう

惨事に便乗する富裕層 財界に肩入れ強権政治

新型コロナ感染症は世界的大流行が続いており、日本でも「第3波」の深刻な事態になっています。

急速に拡大する新型ウイルスの世界的感染(パンデミック)

12月8日には2021年度予算と合わせた73兆円規模の追加経済対策も明らかにされましたが、中小企業や個人事業主を支える持続化給付金と家賃支援給付金は打ち切り、「生産性向上」「事業再構築」を標榜した新事業や業態転換の補助金を創設。雇用調整助成金の特例は3月以降段階的に縮減します。

医療機関が悲鳴を上げている減収補填は措置なし。自治体による高齢者施設などでのPCR検査拡充(社会的検査)に対する国庫負担拡充もなく、財政支出40兆円のうち、感染防止策はわずか5・9兆円です。

一方で「Go Toトラベル」延長、「国土強靭化」と称した公共事業、「ポストコロナに向けた経済構造転換」としてマイナンバーカード普及促進、「5G」以後の技術開発促進など、新型コロナ禍に便乗して財界の利益を図る姿勢が色濃く表れています。

庶民に増税 巨大資本に減税

新型コロナ禍が生活を直撃するもとで、自民党内からも消費税減税論が出始めています。内閣府研究会が明らかにしたように景気低迷を引き起こしたのは景気後退局面での消費増税であることから、有効な対策です。OECD(経済開発協力機構)のグリア事務総長もコロナ禍に対応する緊急政策に「一時的な付加価値税の減税または猶予」を挙げ、英、独、仏など37か国が減税に踏み出しました。

しかし、菅政権は消費税減税に否定的。「税制改正大綱」では、研究開発減税拡充や「デジタル化減税」など大企業優遇を盛り込んでいます。新型コロナ禍でも富裕層は政府日銀の株価つり上げで資産を増加。米誌フォーブズによれば、資産10億ドル以上の日本の超富裕層は、資産総額を3月の12兆円から11月の20兆円に増加させました。

資本階級別の法人税実質負担率(2018年度)

全世代型社会保障 「自助」押し付け 煽る分断

「全世代型社会保障検討会議」は「全世代型社会保障改革の方針」をまとめ、菅政権は12月15日に閣議決定しました。「改革」は、「自助」を基本に、世代間の分断を煽って社会保障解体の方向を鮮明にしています。

全世代型社会保障改革のポイント

後期高齢者医療の窓口負担2倍化は、約320万人、「単身世帯で年収200万円以上」を直撃するものです。

「少子化対策」を口実に児童手当特例給付廃止や世帯合算の収入認定、大病院受診時の定額負担の拡大、新型コロナ禍で破綻が明らかな「地域医療構想」も「基本的枠組みは維持」して、病床削減や公立・公的病院を統合する「医療提供体制の改革」にも固執しています。

温室ガス排出ゼロ 原発依存の矛盾

温暖化の進行と共に増える1時間降水量50mm以上の年間発生回数(アメダス)

首相の所信表明演説の「2050年に温室効果ガス排出ゼロ」目標は、国際社会の要請に応えるものですが、共通課題の2030年までの削減目標と具体的施策に触れず、「原子力を含めてあらゆる選択肢を追求する」原発依存路線です。

今年は福島第1原発事故から10年になるものの収束を見通せていません。

12月4日には大阪地裁が関西電力大飯原発3、4号機の設置変更許可取り消しを認めました。判決は「基準地震動」の審査をめぐる違法性を認定。この判決は、原子力規制委員会の同様の審査にも疑問を突きつけるものです。

資本主義の限界を省みない「。新成長戦略」

世界的に資本主義「限界論」も高まるもと、日本経団連が「。新成長戦略」を発表しました。「利潤追求のみを目的とした経済活動の拡大が環境問題の深刻化や格差問題の顕在化等をもたらした」として、「新自由主義」「小さな政府」への反省を述べていますが、具体的内容は、規制緩和とデジタル化の推進、新型コロナ禍に便乗した兼業・副業の促進「柔軟な働き方」、雇用の流動化、「新たな労働時間法制」など雇用・賃金を破壊する従来の主張の繰り返しです。

実質成長率が戦後最悪の落ち込み

新型コロナ危機を克服するためにも、財界戦略に対抗して「ポストコロナ」の新しい社会へ転換をめざす闘いの発展が重要です。全労連・国民春闘共闘(市従も参加)は、実質賃金の回復と生計費原則に立って春闘におけるベア追求と一体に「全国一律最賃制確立」要求を掲げた最賃闘争を提起しています。

一方、連合の大企業産別ではトヨタ労組(巨額の利益を上げながら20春闘でベアゼロ決着を図った)がベア要求放棄を検討しています。社会的な賃金相場形成を否定し、個別分散化・統一闘争解体の姿勢です。

憲法守り活かす運動広げ、生活優先の政治実現めざす②

憲法改悪を阻止する運動を強め、核兵器禁止条約への批准運動、「日本政府に核兵器禁止条約の署名・批准を求める署名」を推進しましょう
米軍基地撤去、核兵器廃絶、原子力空母母港化反対、日米安保条約廃棄の世論を前進させましょう

人類史の画期 核兵器禁止条約  発効へ

2017年に国連で採択された核兵器禁止条約は、批准国が50か国に達し、1月22日に発効します。条約発効は核兵器廃絶に向けた国際法上の根拠を確固とする人類史の画期的な成果。

日本の世論調査でも7割が条約参加を支持し、10月29日には被爆者ら広範な人々が呼び掛けた「条約の署名・批准を求める署名」も開始され、条約参加を求める地方議会の意見書も全自治体の30%に迫る501議会で採択されています。

米軍のための基地建設 米国のために膨らむ経費

防衛省の2021年度予算概算要求は2020年度当初予算から1764億円の上積みを図る5兆4896億円を計上。配備断念に追い込まれた陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の代替措置や辺野古新基地建設などの米軍再編関係経費は、「事項要求」で、具体化されればさらに膨張します。

「イージス・アショア」の出発点は、トランプ米大統領に米国製兵器購入を迫られたことで、ハワイやグアムの防衛が目的(米国シンクタンク)。

辺野古新基地は、大浦湾側に広がる軟弱地盤の存在で埋め立て工期10年、供用開始まで12年を見込み、「1日も早い普天間基地の危険性除去」は成り立ちません。

鹿児島県・馬毛島の全島基地化は、硫黄島からの米空母艦載機の離着陸訓練移転にとどまらず、自衛隊との一体化、軍事拠点化をねらうものです。

国民の多数は「専守防衛」守れ

憲法を尊重し擁護する―いのち守りきる自治体へ              

憲法と地方自治が息づく働きがいある市政をめざす①

市民要求に背を向け、水道料金や介護保険料の引き上げなど市民負担増を進める林市政に対し、市民本位の市政をめざし、カジノ誘致反対、中学校給食の実施、小児医療費助成の拡大、敬老パス「見直し」を許さない運動など、職場要求と市民要求実現の立場から、夏に想定される横浜市長選挙に向けて、市民要求実現の共同の運動を前進させましょう

市長は、喫緊の課題となっている新型コロナ感染症対策では国や県の緊急対策の実行に終始し、横浜市独自の実効性のある対策は打ち出さない姿勢を続けています。その一方でIRカジノへの固執、新たな劇場検討、上瀬谷基地跡地再開発におけるテーマパーク誘致構想への転換、新交通建設など新たな大規模開発事業を推進する姿勢を強めています。新型コロナ禍にあえぐ住民の生活を無視して、水道料金や介護保険料の引き上げ、敬老パス見直しなどを進めています。

住民要求には…「財政が厳しい」

12月市会で可決された水道料金の平均12%の引き上げは、当初の4月実施を7月実施に変更したものの、減免制度の拡充の要求に対しても現行の支払い猶予の範囲にとどまり制度拡充に背を向け続けました。神奈川県をはじめ全国の自治体が新型コロナ禍のもとで水道料金の「一律減免」に踏み出しているもとで、これに逆行する林市政の態度はその姿勢を象徴的に示すものと言えます。

市民要求の強い中学校給食は、4月から「ハマ弁」を学校給食法に位置づけ給食費上限を日額330円とする議案が可決されましたが、全員喫食を前提としていない弥縫策と言わざるを得ないものです。

10月30日から12月4日までパブリックコメントが実施された2021年度からの「第8期高齢者保健福祉・介護保険事業・認知症施策推進計画」では、介護サービス量をもとに現行6200円から6800円への介護保険料引き上げが示されています。

新たな劇場検討は、異例の「第1次提言」のとりまとめ以降も事業費負担の見通しをめぐる検討委員会の議論が続けられ、建設費約480億円、年間運営費約35億円~55億円の見通しに対して、「負担は可能・妥当」とのとりまとめを行おうとしています。切実な市民要求に対しては「財政が厳しい」と後ろ向きの姿勢に終始していることに照らせば林市政の本質を鮮明に示す事例と言えます。

市長またも…無責任に言明を翻す

組合も広範な市民の共同に加わり推進してきた住民投票条例制定の直接請求運動は、9月4日から11月4日の法令にもとづく署名期間に収集署名数20万8719筆、有効署名数19万3193筆の法定必要数の3倍を超える署名を集約し、12月23日に市長に対する直接請求を行いました。林市長も署名運動が進む中でそれまでの住民投票否定の姿勢から住民投票が実施されればとの前提付きながら「結果は尊重」「反対多数であれば誘致を撤回する」と態度を変化させました。その一方で、当初計画を9カ月遅らせた国の基本方針の提示を受けて、11月には市民の批判が強いカジノを意図的に後景に置いた「広報よこはま特別号」の新聞折り込み配布やIR整備法にもとづき、11月17日に「横浜イノベーションIR協議会」、11月30日に事業者選定委員会を発足させ、実施方針の策定、事業者選定に向けた作業を進めています。

条例制定の直接請求を受けて、12月25日には市会運営委員会が開催され、1月6日~8日に市会臨時会が開催されましたが、林市長は「賛否は表明しない」との言明に反し、「住民投票実施の意義を見出し難い」との意見を附して条例案を付議し、市会与党によって条例案は否決されました。夏の市長選挙に向けて市政の転換をめざす闘いとも結びつけながら、共同の運動を発展させることが喫緊の重要課題となっています。

市長の姿勢に抗議する住民(1月8日、市庁舎前)

憲法と地方自治が息づく働きがいある市政をめざす②

自治体の変質をねらう「地方行政のデジタル化」推進を許さず、いのちと暮らしを守る地方自治の拡充を求めましょう

地方自治を破壊 「デジタル化」のねらい

総務省の2021年度予算概算要求に盛り込まれた主要事業は、「行政のデジタル化」を一気に加速させる姿勢を鮮明にしています。行政手続きオンライン化、AI・RPAの活用、自治体情報システム標準化が並ぶ「デジタル変革の加速による『新たな日常』の構築」には、マイナンバーカード普及・利活用の促進に1451億円の巨費を計上しています。

マイナンバーカードは、12月1日現在で23・1%の取得にとどまり、現実の必要性、情報流出や犯罪の危険性に国民は根強い懸念を示しています。

「デジタル化」のねらいは個人情報の一元化と財界の利潤追求への活用で、自治体システムの標準化は地方行政を財界戦略に組み込んでいくものです。

「Society5.0」がめざす自治体の姿

格差是正 8時間働けば人間らしく暮らせる社会へ

内需主導の経済再生を求め、公務員賃金・労働条件の改善、生活擁護と要求実現をめざす①

ベア獲得、最低賃金引上げめざし、内部留保の社会的還元と富裕層の応分の負担を求めましょう
春の段階から生活改善につながる人事委員会勧告を求め、財政悪化を口実にした賃金削減などを許さない闘いを進めましょう
裁量労働制の拡大、解雇の金銭解決など労働法制の改悪を許さず、働くルールの確立を求めましょう
全国・地域の統一行動や中央行動で官民共同の運動を前進させましょう

増える 失業と自殺と大企業の内部留保

総務省の家計調査(12月8日公表)で2人以上世帯の10月の消費支出は、13カ月ぶりにプラスも、消費増税の駆け込み需要以前の水準に回復していません。

厚生労働省の毎月勤労統計調査の10月結果速報では、現金給与総額が前年同月比で7カ月連続マイナス、実質賃金は8カ月連続マイナス、2015年を100とした実質賃金指数は83・7に落ち込んでいます。総務省の労働力調査(12月1日公表)では、10月の前年同月比で51万人の失業増加です。非正規雇用は8カ月連続減、前年同月比85万人減少と、新型コロナ禍の影響が雇用の調整弁として非正規雇用労働者を直撃しています。

自殺者数も7月以降前年を上回る推移を示し、10月には2000人を超え、とりわけ多くが非正規労働で占める女性では前年同月比8割も増えており、深刻です。

一方、財務省の法人企業統計調査(10月30日発表)では、資本金10億円以上の大企業の内部留保は2019年度末で459兆円、過去最高。2012年度(自民党が政権復帰した年)と比較すると内部留保1・38倍、配当金1・64倍。賃金は1・05倍、有形固定資産は1・1倍にとどまっており、利益は配当金と内部留保に回っています。

大企業の利益、株主配当、賃金の推移

労働時間規制を破壊「柔軟な働き方」

政府・財界は新型コロナ禍に便乗して「柔軟な働き方」を加速させています。リモートワークは、指針で時間外労働の原則禁止を例示していますが、アンケート結果では労働時間管理があいまいで不払い残業の助長が示されています(ともに厚労省)。財界のねらいは成果主義と自己責任と裁量労働、労働時間規制の破壊。副業の促進は、労働者保護の適用を受けない「雇用によらない働き方」への移行をねらうものです。

基本給の構成要素の割合(2019年)

内需主導の経済再生を求め、公務員賃金・労働条件の改善、生活擁護と要求実現をめざす②

組合員参加で「一職場一要求実現」運動を職場から強めましょう
「横浜版フレックス」、「テレワーク」の職場における問題を明らかにし、休暇がとれる職場を確立し、長時間超勤の是正とメンタルヘルス対策を強化しましょう
雇用と年金の確実な接続と生活保障をめざしましょう

賃下げの口実は感染症対策の財源不足

感染症対策による財政悪化を口実にした公務員賃金削減では、京都市で唐突に示され、交渉中断・決裂の事態になりました。次年度予算編成において、全国で財源不足が強調されており、自治体に対する国の財政措置拡充の運動とも結びつけた闘いが重要です。

職場の点検 ストップ!長時間労働

公務職場にも兼業・副業の促進の動きが現れる一方、新型コロナ禍により脆弱な人員体制に起因した長時間・過密労働は増加傾向です。職場実態の点検、必要な人員体制、休息時間確保に有効な「勤務間インターバル」などを追求し、労働時間管理の自己責任化を許さず歯止めをかけることが重要です。

「1日8時間働けば人間らしく暮らせる」当然の要求が財界戦略との鋭い対立点です。

労働強化 賃下げ 定年延長と抱き合わせ

定年年齢の引き上げは通常国会への法案提出が想定されます。「骨太方針2020」に定年引き上げとあわせた「能力・実績主義の人事管理の徹底」を明記して、内閣人事局に「人事評価の改善に向けた有識者検討会」を設置。この夏にも「必要な措置」を実施しようとしています。

さらに、政府は、2029年度末までに昇任・昇格・昇給の基準、俸給表の在り方等所要の措置を講じる賃金制度の見直しをねらっています。

非正規労働者のたたかいは 私のたたかい

差別撤廃を訴えるメトロ原告(昨年9月、都内)

不合理な格差なくせ 労契法20条裁判

非正規労働者の不合理な待遇格差是正をめぐって争われていた3件の訴訟で、10月に最高裁の判決が相次いで示されました。

日本郵便の期間雇用労働者の裁判では、扶養手当、年末年始勤務手当などの不支給や有休の病気休暇を認めないことを「不合理な格差」とする判決が示されました。

一方、大阪医科大学のアルバイト秘書が訴えた賞与の不支給とメトロコマースの契約社員が訴えた退職金不支給は、「不合理な格差にあたらない」とする不当判決を示しました。不当判決が示された2件はそれぞれ、賞与は正社員の60%支給、退職金は正社員の4分の1支給を命じていた高裁判決を覆した判決です。

判決を受けて、立憲・国民・共産・社民の4党が賞与や退職金を義務付ける法案を提出しています。

安定した雇用制度の確立をめざす 会計年度任用職員

法施行から1年を迎える「会計年度任用職員」制度は、総務省調査によっても「制度の趣旨に沿わない」賃金の減額や休暇制度の取り扱いが指摘されています。

「期末手当」を削減する人事院・人事委員会の一時金削減勧告によって、「勤勉手当」不支給の矛盾も鮮明になっています。

日本郵便非正規裁判で非正規労働者への扶養手当などの不支給を「不合理な格差」と認めた最高裁判決も活かして、生活関連手当の支給を求める闘いも重要です。

安定した雇用制度の確立を含めた法改正を求める全国・産別の運動とも結んで、安定した雇用制度の確立へ「非常勤要求」の前進をめざしていくことが重要です。

非正規・正規一体となり、非常勤要求実現と組織強化拡大の取り組みを結びつけて、会計年度任用職員の労働条件改善を前進させましょう。