【第195山】元箱根石仏群とお玉ヶ池(神奈川県) 箱根のエアーポケット

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 箱根と言えば、山中に隈なく観光の網が掛けられ著名なポイントは人だらけ……が、人気度の濃淡の差も甚だしい。名は知られているのに、あまり観光客の目が届かない穴場もそこかしこにある。山目当てのハイカーとて同じこと。人気ルートに行列が切れないのとは裏腹に、すれ違う人も稀なお得感たっぷりのコースが存在する。この両者がコラボすれば、まさに箱根のお山のエアーポケット。その最たるものが、精進池とお玉ヶ池を結ぶルートだろう。

 精進池は、堂々の国道1号線のすぐ脇に佇む池だが、ここでの主役は周辺に散在する石仏群である。すべてが鎌倉期の作、スケールが大きい上に摩耗が進まず、像形や刻字が鮮明なのが印象的で、これほどの物は却って鎌倉周辺では見当たらない。ここの石材は背後にそびえる二子山の安山岩、緻密で摩耗に強い。また、戦乱・火災・津波に度々襲われた鎌倉界隈よりも、環境が穏やかであった証ではないか。

 もう一つの主役がお玉ヶ池だ。終始車の行き交う旧東海道の直下に、水を湛えた姿を惜しみなく晒しているから、目にしている人なら多いはず。だが、車を降りて池畔に立った人はごく少ないだろう。すぐ上に車が走っているのだが、池の周囲は人工物がなく、幽すいなムードすら漂う。静謐な池面に映る逆さの二子山が絵的に決まっている。

お玉ヶ池と下二子山

 石仏群とお玉ヶ池。嬉しいことに穴場の両者は登山道でつながっている。両者それぞれなら観光気分でも歩けるが、双方を連続して味わうのなら歩くに限る。どちらを先に? 精進池の方が100mほど高いので、登り下りの労力優先で決めるのも良いが、ハイキング終了後を睨んで決定してみては如何か。石仏群側の終点は箱根でも老舗の芦之湯温泉。汗をかいた後の入浴の愉しみは何ものにも勝る。一方のお玉ヶ池側の終点は甘酒茶屋。やはり歩いた後の甘味は堪えられない。またこちらなら、さらに旧街道を歩いて芦ノ湖畔に出ても、逆に畑宿方面に下るのもいい。お楽しみ優先でコース順を決められるのは、ゆるゆるハイカーには歓迎だ。

◆おすすめコース
 甘酒茶屋─お玉ケ池─元箱根石仏群─芦之湯温泉(1時間30分:初級向け)
※箱根旧街道の石畳は濡れていると極めて滑りやすいので注意を。