豊臣秀吉の小田原攻めで、戦局の重要なターニングポイントとなったのが石垣山だ。小田原城正面の山のピークに、北条方に知られぬよう、樹林の背後に本格的な城を構築。完成後に前面の樹木を一斉に切り払って、あたかも一夜にして立派な城が出来上がったように見せたことから石垣山一夜城と呼ばれ、現在では公園として整備されている。
まずは駅にほど近い小田原城へ。ここの天守閣からの眺めはピカ一で、相模湾から湘南方面、背後には丹沢の大連嶺、箱根連山は目と鼻の先だ。その箱根の前衛に、石垣山のなだらかな、笠を伏せたような姿(元々は笠懸山と呼ばれていた)の想像以上の近さに驚く。なるほど、こんな間近に一夜で城ができれば、戦意は萎え、降伏に傾くものと納得できるだろう。
城を出たらそのまま石垣山を目指そう。車道が通じていて大半の観光客その他は車で上がるのだが、城と山を実感するのなら歩くに限る。柑橘系の畑の中を登る毎に開ける、背後の相模湾と小田原の街の大パノラマに感動できるのは歩いてこそだ。また沿道には「石垣山に参陣した武将たち」の看板が順次立っていて、秀吉方の各武将が紹介され、歴史気分がいやが上にも盛り上がってくる。
そして石垣山。本丸・二の丸など立体的な構成、建物はないが、未だに見事に組まれた豪壮な石垣に、当時の秀吉の力量を感じることが出来よう。そして一番の目玉が、見晴らし台からの眺めだ。先刻登った小田原城の天守閣を見つけ出して欲しい。現代では背後のビル群に紛れ、なかなか見つけにくいのだが、一度分かってしまえば、しっかり脳裏にインプットされる。これで北条方、秀吉方双方の気分を味わえたことになるというものだ。
下山は山の反対側、箱根方面に下るとよい。ずっと車道だが歩道が整備され、要所には歴史遺跡がある。下り着いて早川を渡ったら、是非にも県立の「生命の星・地球博物館」に立ち寄りたい。ここのビジュアルな展示物は圧巻。じっくり見れば半日飽きない。歴史を感じた後に、今度は理科に触れるわけで、まさに文理両道が自然に身に付く。こんなワンデイハイクも乙なものではないか。
◆おすすめコース
小田原駅─小田原城─石垣山─博物館─入生田駅(3時間:初級向け) ※勉強以外のお楽しみなら、石垣山公園正面の鎧塚ファームでスイーツや買い物を。
◆参考地図・ガイド ◎昭文社:山と高原地図30「箱根」