中期計画 住み続けたい都市づくりを労働運動の力で

 8月30日、山中竹春市長は「横浜市中期計画2022~2025」(素案)を公表しました。

 「真に子育てしたいまちを実現するためには、子育て世代への直接支援の施策に加えて、地域のつながり、安心できる暮らし文化や学びの充実、自然豊かな環境など総合的な視点が必要」。山中市長は基本戦略を掲げました。横浜の魅力を高めるあらゆる施策と連携させ、中期計画の中核となるのが基本戦略です。

  【基本戦略】
  子育てしたいまち
  次世代を共に育むまち
  ヨコハマ

基本戦略の構造(横浜市中期計画(素案)に基づいて編集部が合成)

 計画策定の考え方や骨子をまとめて5月31日に公表した「新たな中期計画の基本的方向」では、「共にめざす都市像」=「明日をひらく都市」、「めざす未来の具体像」、「9つの戦略」=10年程度の取組の方向性、「38の政策」=4か年で重点的に推進すべき政策を提示していました。しかし、それぞれの相互関係は必ずしも明瞭ではなく、その具体的内容の不透明さとともに、先の市長選挙で掲げた山中市長公約がどれほど盛り込まれるのかも見通せないものでした。

 今回、素案の中で、全ての政策分野の基軸に据える上位指針として、5つのテーマ(子育て世代への直接支援、コミュニティ・ 生活環境づくり、生産年齢人口流入による経済活性化、まちの魅力・ブランド力向上、都市の持続可能性)をもち、9つの戦略を関連させて配置する基本戦略の構造が示されたことで、中期計画の全体像と山中市長の志向する市政運営の姿がいくらか明確になってきました。

 主な施策や施策指標などに、主要公約の「3つのゼロ」も盛り込みました。「子どもの医療費」は「中学3年生までの医療費助成の所得制限や一部負担金の撤廃を令和5年度内に実施」を明記。「出産費用」は「(基礎的費用)の無償化を含む妊娠・出産・子育てにかかる経済的負担の軽減を図る」と記述。「敬老パス自己負担」は「高齢者の外出支援の観点で、敬老パスのICカード化により得られる利用実績等も踏まえながら、敬老パス制度(75歳以上無償化)も含め、持続可能な地域の総合的な移動サービスの検討を進めます」と表現。

 重点施策として推進するうちの一つだった「中学校給食の全員実施」は「デリバリー方式による供給体制の確保と生徒に満足してもらえる給食の提供に向けた準備」を進めて「全員に供給できる体制の確保が完了」することを目標値に設定しました。長らく「愛情弁当」を前提にした良妻賢母規範モデルから脱却することができず「みんなで食べる」中学校給食の導入が遅れに遅れてきた横浜市。自校・直営方式が最もよいとされる中学校給食の理想からは距離があるとはいえ、選択制のままで100%提供可能体制を確保するものではあっても、大きな転換と前進です。市長公約実現を後押しするために市民世論をひろげる取り組みを継続する市民団体や労働組合の運動を励ますものでしょう。

 原案の策定とそれを基に議案を提出する予定は12月頃となっていることから、さらに多くの市民の意見を集めながら、市民要求の実現につながる公約実現を促進することが労働運動や市民運動への社会的要請となっています。