物価上昇超えるベア求める JMITU小坂研究所支部がストライキ

 金属大手の集中回答(3月15日)に満額回答が並びました。主要42組合の賃金改善の平均は8407円で、近年にない、ベア春闘が再開された14年以降で最も高い水準。今後の焦点は、物価上昇に見合うベースアップの獲得と、中小への波及です。

「インフレ手当でごまかすな」

 精密機器製造の小坂研究所(埼玉県三郷市)で働くJMITUの支部組合員が3月9日、2時間の時限ストライキを行った。会社側は前日、一律36万円のインフレ手当支給を提示したが、あくまでも物価上昇分を超えるベアが必要だとして上積みを求めている。同日、社内の食堂でスト集会を開き、闘争の継続を確認し合った。

 支部の要求6万円に対し、会社側は昨年の初回回答より3千円多い9千円(定昇相当分込み)と、1人当たり一律36万円のインフレ手当を示した。同支部は9日、低賃金のうえ実質賃下げになるとして2時間の時限ストに入った。

 関根恭介書記長(28)は「会社側は材料などの高騰でギリギリだと主張しているが、『業績が底』と言っていた一昨年度も内部留保を積み上げていた。賃上げの原資はある。そのデータを示して大幅なベアを求めていく」と語る。

 スト集会での職場討議では、ある部署の代表がインフレ手当案について「それなら基本給を月3万円引き上げてほしい。大幅上積みを要求する」と発言。他の部署も「このままの賃金水準では将来が不安」「家族に苦労かけたくない」などと意見を述べた。

 入社3年目の組合員(27)は「両親に仕送りをし続けなければいけない。生活が本当に苦しい」、勤続40年超の組合員は「ベアに命をかける。基本給が上がらなければ退職金も年金も増えない。ベアはどの世代にとっても切実」と話していた。

 関根書記長は「物価高騰分を上回る1万6千~7千円が交渉のスタートラインだと思っている。インフレ手当でごまかさないで基本給を上げろと要求していく。私は10年目で手取り約20万円。これでは貯金もできない。ベアにかける思いは今まで以上だ」と語った。

職場ごとに集まって会社側の回答について話し合うJMITUの組合員(3月9日、埼玉県三郷市)

 JMITUの全体の回答状況は3月8日現在、単純平均で7462円(2・82%)、加重平均は8151円(2・72%)。昨年同時期を約1800円上回るが、物価高騰に見合わない。

ダイジェスト 金属大手の集中回答

大手12組合、全て満額/自動車総連

 完成車メーカーなど12組合は全て満額回答(一部で満額以上)となった。賃金制度維持分を含む総額では、日野自動車と非公開のトヨタを除き、10組合が5桁の引き上げを獲得した。

全12労組が満額/電機連合

 大手12労組が、開発・設計職基幹労働者の賃金水準改善「7千円」の満額回答で、足並みをそろえた。先行主要組合が全て満額を獲得したのは、確認できる限り初。

先行グループが健闘/JAM

 金属関係の部品メーカー労組では、先行大手労組の健闘が目を引いた。先行グループのベアなど賃金改善額は8572円で、賃金構造維持分を含めると1万4744円。

ベア1万4千円/基幹労連

 造船・総合重工、非鉄金属の大手労組が2023年度の回答を引き出した。総合重工の労組が、物価上昇を超える総額2万円の満額回答を引き出している。