名だたる大企業の満額回答の一方で、国民春闘共闘に結集する、医療や介護分野の初回回答は、賃上げで厳しい結果が示されています。ケア労働・エッセンシャルワークを軽視する国の姿が表れているようです。
何年働いても賃金が増えない
国立病院機構の職員でつくる全日本国立医療労働組合は3月9日、前日の「ゼロ回答」を受けて、全国約140の病院で指名ストライキを行った。全国で200人超が指名ストに入り、約千人が行動に参加した。今後、難病治療など国の政策医療を支える国立病院の職員の窮状を社会的に訴え、機構に再回答を求めていく考えだ。
2004年の独立行政法人化以前も含めて賃上げを求めるストは初。国の政策医療を担いながら賃金は国家公務員の水準を下回る。非常勤職員は何年働いても経験加算が全くない。若年層の基本給改定は昨年の人事院勧告を下回る0・2%だった。
全医労は、国家公務員水準への回復と非常勤職員の経験加算などを求めた。しかし、機構は3月9日、「ゼロ回答」を示し、「交渉打ち切り」を通告した。
前園むつみ委員長は9日に都内で開いた会見で「今の賃金体系では人が集まらず、人が次々に辞めていく。人員が不足し、患者に十分なケアができない事態も生じている」とストに踏み切らざるを得ない実情を説明した。
特に重視するのが非常勤職員の経験加算。例えば時給10円の昇給を毎年行うのに年2億円の原資が必要だが、2023年度の経常収支見通しは400億円超あり十分支払える――と前園委員長は指摘する。
勤続19年目の非常勤職員の女性は、茨城県内の病院で働く。「勤続年数を重ね業務が増えても賃金が新人と一緒というのはすごく不満。コロナ禍の3年間は救急車を全部受け入れる方針の下で医療を支えてきた。その間は疲弊どころか、ご飯も食べられなかった。『もう辞めてもいいかな』と思うのは当然だと思う。昨日の回答には憤りしかない」と切り捨てた。
支援者とともに正門前集会
東京医療センター
看護師の大量退職が週刊誌で報じられた東京医療センター正門前では、始業後1時間のスト集会を行った。通勤途中とみられる自動車から「がんばれー」と激励する声援が送られた。
看護師の女性は「外来も人員不足。待合室で容体が急変した患者に気づかないことがあった。とにかく人員が足りない。これ以上、辞めないように処遇を改善してほしい」と話した。