【第240山】月山1984メートル(山形県)出羽三山その②

 出羽三山、殿の紹介は月山である。日本百名山であり、宗教・観光関係に縁のない登山者の人気も非常に高い。古来の名峰だけあって登山道は数多く、交通の便の良いルート利用なら所要5時間ほどなので日帰り登山が大半なのだが、是非にも山頂の小屋で1泊することを勧めたい。

 出発は羽黒山側の月山8合目。昔の人の5分の4の労力で登頂できるわけだ。まずは一登りで広大な弥陀ヶ原の湿原に出る。木道が巡らされ、悠揚泰然とした月山を正面に、下界や遠方の山々を見下ろしつつ、花いっぱいの湿原歩きが満喫できる。そして山頂へ。まったりと大きい山のシルエットを反映して、急登が続くようなところがないのも、月山登山の魅力だろう。

 山頂には標識と三角点があるが、より高い所に月山神社が建っている。祓料500円を納めてお祓いを受け、小さな社殿の建つ最高スポットへ。屋根の上に二つの鏡があり、お賽銭を投げつけて見事命中すれば願いが叶うという奇想天外な神域だ。

 神社から一段下った所に山頂小屋が建つ。補給の便の悪い山頂とは思えないほど、綺麗で充実した山小屋だ。手入れの行き届いた内装、デザイン性の高い部屋名標、清潔感満点のトイレなど設備面。さらに驚くのが山の幸をダイレクトに豊富に取り入れた朝食・夕食で、食事自慢の民宿顔負けの豪華さなのである。

月山山頂の神社、バックの山は鳥海山

 山頂に位置する山小屋の最大のメリットは、登山最大のショーである日没と御来光を、心ゆくまで眺められることにある。小屋から徒歩2分で夕日スポットがあり、日本海に沈む落日は荘厳そのもの。霊山巡礼の中でも、最も強く霊感に打たれるのは、日没の瞬間ではないかと思えてくるだろう。一方の朝日は、東北の山々から登ってくる。北隣には秀麗な鳥海山がそびえ、南側には北アルプスを思わせる朝日連峰が連なる。また月山自身の伸びやかな山肌の連なりが、眺めに豪華な彩りを添えている。

 下山は行きとは反対側に取ろう。終始パノラマの広がる豪快なルートだ。ラストの姥ヶ岳は湿原景観や展望に優れ、ミニ月山といった風情で2日間を締めくくってくれる。

◆おすすめコース
月山8合目─月山(泊)─姥ヶ岳─月山リフト(5時間:初級向け)
※花の多い7月中は残雪も多く経験者向き。月山から湯殿山神社に下るルートもあるが、秋に行くのが無難。

◆参考地図・ガイド◎羽黒町観光協会のホームページから「月山山頂への道マップ」をダウンロード