【第253山】恵山618メートル(北海道)北海道南端の灯台

 羽田空港から千歳空港に向かう飛行機が、北海道エリアの上空に最初に差し掛かった時に下界を見てみよう。半島の先端、海の青に囲まれた陸地のグリーンの中に、赤茶けた一塊が印象深い。これが恵山で、噴火歴の新しい火山であるので、火山地形むき出しで目立っているのである。江戸時代後期にたびたび噴火して、かなりの被害を出してもいる。今なお常時噴煙が上がり観測対象になっていて、油断ならない火山と言えよう。ただ、現在は比較的大人しいので、山頂まで登ることができる。

 登山対象としての売りもまた、三方を海に囲まれていることに他ならない。ルートはよく整備されている上に中腹に駐車場があって、天候さえ良ければ誰でも気軽に登れるのもいい。植生は少なく、荒涼とした岩ゴロゴロの風景が続き、時に噴煙も見るなど、地球の息吹きを感じつつ高度を稼いでいく。やがて右と左、交互に海の青さが飛び込んでくる。

 山上部は台地状で広く、岩の積み重なる狭い最高地点に山頂標識が立つ。海も空も底抜けに広大で感慨深い。飛行機からの眺め通り、青海原が270度に渡って展開する。南側の津軽海峡越しには下北半島の山々が見え、北側には日高山脈から道央の山々など、海の向こうの眺めにも興味が尽きない。逆に言えば、それら広大なエリアから、恵山は半島の先端に見えていることになる。正に灯台のような存在だ。山上の一隅には無人の神社があり、この地が北海道でも開発の早かったことがうかがえる。

 さて恵山がニッポンの山の中でオンリーワンといえるのは、やはり半島先端の高峰であることに尽きよう。ニッポン最大級の半島である渡島半島、その外形が北海道を北海道らしく見せている存在だが、南端で二つに分岐し、南東側の亀田半島の末端に恵山が位置している。山頂から半島先端の岬までの距離は僅かに1780m。半島先端度争いの有力ライバルは薩摩半島の開聞岳だが、岬からは少しずれていて、恵山ほどの見事な適合性には及ばない。灯台なるもの、大概は岬の先端に立っている。恵山こそニッポン随一の山灯台なのである。

下界から見た恵山の威容

◆おすすめコース
駐車場─恵山(往復2時間:初級向け)
※霧が係るなど天候が思わしくなければ、安全のため登らぬ方がよい。
◆参考地図・ガイド ◎「恵山への登山」でネット検索して、函館市公式サイトから地図をダウンロード