ハマ弁 誰のための昼食か〈上〉当日注文の20%超は職員の試食

 「ハマ弁」の事業者との5年契約が2021年3月末に終了します。市教育委員会は、その後の中学校における昼食の方向性を今年度中に決定することを9月12日市会のこども青少年・教育委員会で明らかにしました。

フルセット。ご飯は温かいが、おかずは冷たい

 9月から外部有識者による「懇談会」が開かれており、今月から生徒や保護者、教職員ら約5千人を対象にアンケートが実施されます。アンケート結果を参考に来年1月には方向性の「案」が策定される予定です。

 懇談会は外部有識者とされる大学教授や「横浜を愛する食のプロフェッショナル達」とされたNPO団体理事長ら5人、小中学校長の代表ら4人、保護者を代表してPTAから1人という計10人で構成されます。

 アンケートの対象はハマ弁を食べる機会のある6校の小学6年生とその保護者、教員。中学校は各区1校の各学年1クラスを抽出します。

喫食率向上に執念燃やす

 そもそもハマ弁は喫食率20%を想定して「横浜らしい中学校昼食」として約半年の試行期間を経て、2017年1月から全校で始まりましたが、喫食率も評判も惨憺たるものです。

 2017年には専用アプリを導入し、2018年4月からは「値下げにより(喫食率が)3割程度まで上がる可能性はある」として、販売価格を値下げ(フルセット470円→340円)。それでも喫食率が伸びず、同年8月からは12校で「当日注文」の試行を始めました。

 けれども、業者がハマ弁を作り始めるのは午前3時から。市教委から注文数を見込んだ数が指示され製造するため、廃棄数は約3か月間で2150食にのぼりました。市内だけでなく、全国区のマスメディアから批判を浴びるも、林市長は「大いなる勝負だ」と、5月28日からは全校実施へと踏み切りました。

 しかし、7月現在で喫食率は3・9%と低迷したままです。引き下げた目標、「今年度中に15%(の喫食率)」ですら達成は絶望的です。

市長がゆがめるお昼ごはん

 当日注文5月(4日間)の実績を見てみましょう。製造数1531食、注文数592食、廃棄数25食。おや?数字が合いません。合わない914食分は「教育委員会試食数」と報告されています。

 市教委の担当係長の一人に電話取材したところ、「試食数」というのは、教育委員会事務局で希望する職員が買い取った数とのこと。配送はトラックで中学校に運ぶ〝ついで〟に、関内にも運ばれているそうです。

 販売価格はご飯・おかず・汁物で390円(教職員と同額・生徒販売価格300円)。9月13日付けの神奈川新聞によると、一食あたり1556円(2018年度)の税金が投入されています。

 横浜の中学生のために用意されているはずの「ハマ弁」。実際に昼食を用意することができない家庭には十分に行き渡っていない現状を置き去りに、「弁当屋に注文するように職場で取りまとめて注文している」「食べていくうちにどんどんファンになっていく職員もいる」「(職員の)みなさん、楽しみにしてくれている」(いずれも前掲の係長談)とのこと。

 一体誰のための制度なのでしょうか。ハマ弁の今年度当初予算は9憶8700万円が計上されています。市長の誤った市政運営が中学生のための昼食制度をゆがめています。

 全校実施が始まった当日5月28日の「試食数」は239食、翌29日は250食、30日は186食、31日は239食(資料提供:古谷やすひこ市会議員・日本共産党)。

 250食「試食」した日こそ廃棄数が25食あったものの、その他の日は市教委の職員が買い取ったことで、まるで〝完売したかのよう〟に廃棄数が0食でした。7月11日までの実績で見ると、「試食数」は2499食にのぼります。当日注文全体の20%超を私たち職員が食べてしまっている中学校昼食。市民に説明がつきません。

子どもの気持ち 想像して

 これまでハマ弁の無償提供は、保護者不在等の家庭からの申請があった場合に面談を行い、認められた場合に限定していました。今年度からその対象は就学援助家庭まで広がりましたが、思春期の子どもが喫食率わずか3%のハマ弁を毎日食べることは容易ではありません。市長には子どもの気持ちを想像することさえできないのでしょうか。

 学校給食法に則った全員喫食の給食ならば、みんなが同じ給食を食べ、誰が無償で提供されているかは可視化されず、子どもたちの心を傷つけることもありません。注文のためのアプリも必要なく、廃棄される弁当もありません。