30年前の導入以来「社会保障のため」と言われ続ける消費税。ところが増税と重なり合うタイミングで、社会保障の給付削減と負担増の議論が始まりました。
先月発足した「全世代型社会保障検討会議」です。
安倍晋三首相を議長とするこの会議には、議長代理の西村康稔全世代型社会保障改革担当相や、麻生太郎財務相、加藤勝信厚生労働相ら関係閣僚6人と民間から9人の「有識者」が加わっています。
財界代表と御用学者ずらり
その内訳は、財界から、中西宏明経団連会長、経済同友会の桜井謙悟代表幹事とサントリーホールディングス社長の新浪剛史の3人。
残る6人は研究者ですが、科学的エビデンスに基づいた政策立案を目的とした人選とは異なって見えます。たとえば、現在は社会保障制度改革推進会議の議長を務め、マクロ経済スライドによる「減り続ける年金」制度の継続を支持している清家篤(前慶應義塾長)のような、典型的な御用学者ばかりです。
9人全員が、経済財政諮問会議・未来投資会議・社会保障審議会・労働政策審議会・社会保障制度改革推進会議のいずれか、または複数の政府内の会議のメンバーとして、社会保障もしくは労働法制の改悪の旗振り役をしてきたという面妖な構成なのです。
一方で、労働者の代表や、医療・介護の現場の代表者は排除されています。一人も参加していません。
まさに安倍政権がこれまでに閣議決定した「骨太の方針」や「成長戦略実行計画」にある給付削減と負担増の方向をさらに加速させていくための結論ありきの会議にほかなりません。政府が政府に対して、労働者が歴史的に闘い取ってきた「権利としての社会保障」を根こそぎ破壊していくお墨付きを与えるための自作自演の会議です。
9月20日の初会合では、「小さなリスクは自助」との発言があったと報じられています。失業・疾病・高齢などによるリスクは、一部の富裕層には小さく見えても、労働者個人では対応できない、生存を脅かすものです。だからこそ、社会保障は公が責任を負うものであり、その財源は、社会のしくみの中で大きな儲けを得ている財界が応分に負担するべきものです。
憲法を尊重し、かつ擁護する義務を負わされている職を自ら選んで就いているはずの首相をはじめとする閣僚たち。
憲法にも明記されている国民の生存権と国の社会保障的義務を果たすことが彼らの仕事である。労働者を犠牲にして利潤を最大化しようとする財界代表と一体となって、本当のところ、「全世代型」と言いふらしながら何をしようとしているのでしょうか。