カジノを中核とする統合型リゾート施設(IR)の誘致へ向けた商談見本市となる「第一回横浜統合型リゾート産業展」が1月29日と30日の2日間、パシフィコ横浜で開催され、のべ9631人が訪れました。首都圏での産業展は初めて。横浜商工会議所ほか横浜財界系9団体からなる「IR横浜推進協議会」が共催です。
オープニングセレモニーでは、堀正人実行委員長が「IRによって横浜がより魅力ある世界有数の国際観光拠点となるよう更なる飛躍をもたらす」、「IRが単にゲーミング(カジノ)だという誤解をぜひ払拭していただいて、IRの正しい理解をできる場」にしたいとあいさつしました。産業展の会場には各国のIR事業者6社をはじめ、建設業や管理システム、人材派遣などの国内外の企業45社のブースが設けられました。
出展企業は、様々なショーや空間に映像を映し出す技術、顔認証システムによって「対象者」の滞在時間や滞在場所が表示される最新技術を展示していました。企業によってはパンフレットだけでなく、アルコールやコーヒー、クッキー、蟹の味噌汁、花束などを配布してPR。特に目立っていたのは、やはりIR事業者のブースです。「世界のエンターテインメント」を打ち出したラスベガス・サンズのブースでは、おしりや太ももをあらわにした専属エンターテインメントチームの女性が男性にリフトされて開脚するパフォーマンスが披露されました。
すべてのブースに共通していたのは、カジノについての展示や説明が一切なかったこと。「世界最高水準のパフォーマンス」、「最先端技術」の提供ができるというアピールのみでした。
住民の望む雇用は生まれない 外国人派遣する企業を取材
横浜市はIRを誘致することによって、多くの雇用が生まれると宣伝しています。IRに労働者を派遣する企業を取材しました。
対応してくれた担当者によると、「現在外国人労働者が人気」とのこと。外国人サポートのパイオニアと自称するその会社の実績は実に1万6000人以上をサポートし、日本全国へも導入実績があるとのこと。具体的には、技能実習生や特定技能、留学生などを派遣しているそうです。
IRが横浜に誘致された場合、「現在人気」だという外国人労働者も多く雇われる予定なのか尋ねると、「もちろん、そうなるでしょう」との答え。様々な店舗の店長やマネージャーといった正規職員や、飲食店のホールスタッフ等の「見える場所」では日本人が多く雇用されることが想定されますが、「見えない場所」である清掃業務やキッチンスタッフ等については、現在のホテル業界でも多くの外国人労働者が雇用されているとのこと。日本人労働者と外国人労働者の比率はどれくらいになることが予想されるのか問うと、「(IRでは)現在の正規・非正規の割合がおおよそ20%・80%です。その比率に限りなく近くなるでしょう」とのこと。
つまり、一部を除けば外国人非正規雇用が全体を占めるのです。取材によって、地域に住民の望む良質な雇用が生まれることはないとわかりました。
すべて「顔」で情報収集 何もかもキャッシュレス
キャノンのブースでは、「群衆人数カウント」というモニターが展示されていました。映像から瞬時に人数のカウントができるというものです。実際に産業展会場の人数カウントをおこなうだけでなく、設置したカメラ映像からブース内に入った人数をカウントし、自動でグラフ化する技術が展示されていました。
「顔」で対象者の情報を収集
「顔認証システム」の技術を展示していたのは富士通のブース。国内在住者がカジノ(ゲーミングフロア)に入場するためにはマイナンバーカードを必要とし、入場とともに顔画像データも提供することになります。その画像をもとに、「入場者がフロアのどこにいて、何時間ゲーミングフロアに滞在しているかが瞬時にわかる」と担当者が説明してくれました。配られた資料には「カジノ入場規制対策を効率化!滞在超過者のリアルタイム検出」と書かれ、IR誘致に向けた技術開発だと答えてくれました。他国のカジノではどのようなシステムが導入されているのか訊ねると「カメラ等を通して、人の目で捜索しているようです」とのこと。また、このシステムでは対象者の存在を瞬時に確認するだけでなく、近くのカメラ画像に切り替え、対象者がたった今何をしているのかも把握することができるという。
NECのブースは顔認証システムを用いて、空港から手ぶらでIRを楽しむことができるようにするという提案をしていました。事前に顔データとクレジットカードデータを登録しておくことで、飲食店やショッピング、ホテルのチェックイン、部屋の開錠もすべて「顔」でおこなえるようになるとのことです。実際、和歌山の南紀白浜では実証実験がおこなわれています。