副市長の発言の一部を分析してみた
副市長「どこへ行くのもカジノを通る必要があるということですが、そんなことないと思います」
―1月27日付の神奈川新聞によれば、実際に設計をしているデザイナーが「(将来の客となる)次世代を考えてカジノをデザインしている」と言っている。「デザインするときはカジノが真ん中。カジノの周りにレストランやブティックがある。コンサートホールはカジノの向こう側。ホテルに入るロビーはカジノを通った先にある。どこに行くにもカジノを通る。例えば、子どもの保育施設でさえカジノの横を通る」と。そんなことないと「思う」のは勝手だが、事実、そのように設計しているのだ。
「我々は街を回遊して地元をぜひ潤っていただくような提案を求める」
―海外の事例をみれば、ユニフォームやタオル類のランドリー、ホテルや飲食店の食材などは、一部の地元業者への発注もある。参入可能な地元業者のみIRに依存しながら発展し、地域全体としては衰退していくだろう。加えて、IRはその施設内に客を取り込んで離さないように造られる。事実、前述のデザイナーは「カジノから一歩も街に出ないようにデザインする。街に還元なんてありえない。あったら僕の負け」と述べている。カジノへの集客力を高めるために、IR施設内の食事やサービスはカジノのコンプにより、周辺地域の店舗とは比べ物にならない低価格で利用できるようになるのだろう。また、「送客」機能として、リムジンバスで客の送迎が行われ、事業者が提携する施設へとそのまま輸送するシステムだ。地元の飲食店や商店等に客がいなくなることは容易に想像できる。
「ATMは禁止ですし、それから貸金業も禁止と言う風なことになっております」
―特定複合観光施設区域整備法(IR整備法)を見てみよう。第四章第四款に「特定金融業務」の記載がある。カジノ事業者から客に金を貸し付けることができるというものだ。第七十六条3項は「カジノ事業者が第三十九条の免許を受けておこなう特定金融業務については、銀行法の規定は、適用しない」と定めている。事業者の貸し付けは外国人観光客だけでない。国内住居者で一定額以上の金額をカジノに預け入れている者も対象になる。
貸金業法の総量規制(年収の3分の1を超える金額は貸し付けることができない)が適用されないため、事業者の判断により、いくらでも貸し付けられる。2か月間は無利子の貸与が可能なので、借金で大口の賭博にのめり込みやすい。それを過ぎると年利は14・6%。生活破壊は目に見えている。
ATМは禁止で貸金業も禁止だとしても、そういう「特定金融業務」のためにクレジットルームのような場所がIRの中に設けられるのは明白だろう。
「『売春婦がいないといけない』というのはあまりにも突拍子もないご意見だ」
―デザイナーは言う。「(買春のあっせんをする)ポン引きは20部屋ほど借りている。外国から女性が観光ビザで入って宿泊客となっている。ホテル側は(売春婦に)客の友達と言われると、どうしようもない」「日本人女性は世界中で人気がある。地元の女性にも声がかかることが怖い」と。
マカオでは、法律で禁止されているにもかかわらず、IR施設内で公然と組織的な違法買春が横行していることが現地メディアの報道で明らかになっている。香港の新聞「South China Morning Post」の「This Week In Asia」(2019年10月20日付)で「ファミリーフレンドリーを打ち出したマカオのカジノに何が起きているのか」と題された記事には、違法買春や人身売買による性交渉の強要が蔓延していることが赤裸々に綴られている。
施設内で組織的違法売春が確認されているマカオのIR事業者も出展していた横浜の産業展で、副市長がいくら「健全な施設をつくっていただきたい」との願望に力を込めても滑稽としか言いようがない。
産業展における副市長の発言
~あいさつ~
このような場におきまして、横浜市の目指すIRについてお話をさせていただく貴重な時間を頂戴いたしました。主催者である、横浜統合型リゾート産業展実行委員会の皆さま、また、共催者である横浜型IRの実現に向けて日頃から力強いご支援をいただいている統合型リゾート横浜推進協議会の皆さまにこの場をお借りしてお礼申し上げます。
~説明(要旨)~
◆ 多くの雇用を生み出せれば…。地元企業、日本企業の経済活性化につながるIR施設にしないと、横浜市としては意味がない。雇用や物品、食料、サービスの調達等も地元企業からおこなってほしいという提案を求めていきたい
◆ 日本といえば横浜、横浜に行ってみよう、横浜のIRで楽しんでみよう、そんなIR施設にしていきたい。そういう提案を求めたい
◆ 家族で楽しめる統合型のアミューズメントリゾートを目指したい
◆ 徹底したリスク管理を我々もやりますが、事業者自らご提案いただけないかと思っている
◆ カジノ施設内にはATMの設置や貸金業はできないとした法律になっている
◆ 依存症については、既存のギャンブルに対する依存症(対策)を推進していく
~最後に~
最後に、お話をさせていただきたい。先日ある新聞に建築家の講演の記事が掲載されておりました。私、それを見たんですけど、ずいぶん誤解があるのではないかと思いました。例えば、その人の発言によると、ホテルのロビーはカジノを通った先にある、どこへ行くのもカジノを通る必要があるということですが、そんなことないと思います。
それから、街に、地元に還元なんかないんだというふうなことをおっしゃっていますが、我々は街を回遊して地元をぜひ潤って(発言まま)いただくような提案を求めますし、それが大きな選定基準になっていくと我々は思っています。
それから、クレジットルームをつくるなんてこともおっしゃっていますが、先ほど申し上げたように、ATMは禁止ですし、それから貸金業も禁止という風なことになっております。
ここはちょっと私も大変問題だなと思ったのは、「『飲む、打つ、買う』が1セット」と。こんな場で言うことではありませんが、売春婦がいないといけないんだという風なことをおっしゃっております。これはあまりにも突拍子もないご意見だと私は思っております。そういう風なことは我々とそしてカジノ管理委員会がきっちり管理して、免許を取り消しということができるわけですから、健全な施設をぜひ我々はつくっていただきたいと思います。
カジノ面積は3%じゃ儲からないから、5%、10%にすればいいとおっしゃっていますけれども、これは日本の法律の中で3%と決められておりますから、そんなことできるわけもない、ということでございます。ということで、まだまだきちっとした情報を我々、市民の皆様にお伝えしていく努力が必要だなと改めて感じたところでございます。そういう対応を含めまして、先ほど来、申し上げております、世界に認めていただける、健全なIR施設を横浜市としてはぜひつくっていきたいという覚悟でございます。