新型コロナウイルス感染症拡大の影響が長期化する中で、学生の窮状が深刻化しています。緊急事態宣言によるアルバイト先の自粛等で収入が得られず、学費はおろか、生活費さえ賄えない学生が増えています。
大学の授業料は国立で年間53 万5800円(標準額)、私立文系は100万円を超え、理系になると150万円を超えるのが一般的です。親からの支援や自身のアルバイト代、そして3人に一人が奨学金を借りて学費と生活費を工面しています。
政府は4月30日に成立した第一次補正予算で、学生に対する授業料の減免として総額7億円を計上しました。しかし、日本の高等教育機関の学生は約363万人(文部科学省「令和元年度学校基本調査(速報値)」より)。7億円では学生1人あたり190円程度にしかなりません。翌5月1日、学生の窮状を訴えるために学生団体「高等教育無償化プロジェクトFREE」(以下FREE)と「一律学費半額を求めるアクション」(以下半額アクション)の代表が日本記者クラブで記者会見を開きました。
学生の声の高まりに押された政府は19日、総額約530億円の追加学生支援策を閣議決定しました。新型コロナウイルスの影響でアルバイト先が休業するなどして経済的に困窮する学生の約43万人を対象に「学生支援緊急給付金」として1人あたり 10万円(非課税世帯は20万円)を給付するとしていますが、対象は一握り。様々な条件に当てはまるか、「大学等が必要性を認める」学生に限られます。
この閣議決定を受けてFREEと半額アクションが開いた緊急記者会見での「10万円、20万円もらったところで何になるんだ」という学生の発言が切り取られて報道され、ネット上で誹謗中傷に晒されています。新型コロナウイルスの影響で学生だけでなく、親たちの収入も減少や途絶えている現状。学費を払い続けて生活を営むためには、10万円や20万円の給付があっても〝焼け石に水〟にすらならないことは誰でもわかること、にもかかわらず。
FREEが大学生や短大生1200人におこなった調査(4月9日から27日まで)によると、5人に1人が退学を検討しています。学生が追い込まれているのは、日本の高等教育への公的支援が少なすぎることがそもそもの原因です。子育て世代における可処分所得は下がり続ける一方で、学費の値上げは留まるところを知りません。
学生たちは「高等教育は贅沢品であってはいけない」と学費の一律半額を掲げて立ち上がりました。コロナ禍が炙り出した窮状を日本資本主義は予てから学生に押し付けてきました。いま勇気を持って社会正義を実現しようとする人たちを孤立させてはいけない。