【第190山】賎機山 171メートル(静岡県)低山ながら格の高い山

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 全国47都道府県の中で、山が県名の由来となった県が2県ある。ひとつが鹿児島県、そしてもう一つが静岡県だ。命名の根拠となったのは県庁近くの賎機山。「賎機山→賎ヶ丘→静岡」と変化したという。

 賎機山を含む山地は、市街地の中心からいきなり立ち上がっているのだが、北に向かって延々と伸びていく。初めこそ200m前後の低山だが次第に高さを増し、1000m、2000m台に。そして遂には3000mを越し、ニッポン第2位の高峰:北岳にまで連なるのである。つまり賎機山は白根三山の末裔、栄光の山地が平野に没する直前の山。出自の格が極めて高いわけだ。

 そんな話題に富むばかりではない。200mクラス以下の低山部だけをピックアップしても、ハイキングの対象として十分な魅力を秘めている。スタートは新東名高速手前の鯨ヶ池。ここからラストの賎機山に向かって細かいアップダウンが続くが、変化に富むコースで飽きる暇がない。

 まずは登山口、さすがは茶の国:駿河だけあって、茶畑から始まる。その後も随所に、整然と幾何学模様を描く美しい茶畑を何度も横切る。ただ近年の日本茶離れの傾向もあってか、放置された茶畑も多い。野放図になるとお茶の木は信じられないほど暴れだし、ボサボサの低灌木帯と化してしまう。こちらが本来の姿なのだろうけれども。

 茶畑に次いで多いのが、これもご当地ならでは、ミカン畑である。冬でも常緑のグリーンに橙色が目に染みる。展望も要所要所で開け、遠く南アルプスや伊豆半島、そして富士山。大都市に密接しているため、眼下はびっしりと建物で埋まり、それはそれで見応え十分だ。

 お目当ての賎機山は、山頂が広くならされている。これは南北朝の頃、今川氏が築いた山城の曲輪の史跡であるため。歴史的価値も十分高い山なのだ。ほどなく下り着いた先が、市内ナンバーワンの規模を誇る浅間神社。壮麗な社殿に目を奪われる。ここから駅や県庁まで1㎞圏の近さ。一つの山地が県庁所在地の心臓部にこれほどまでに食い込んでいる例も珍しい。山名由来の県名、むべなるかな。全国レベルで注目されていい山といえよう。

◆おすすめコース
 鯨ヶ池─賎機山─浅間神社─静岡駅(約4時間:初級向け)
※観光ついでなら神社から賎機山往復でも良い。往復1時間ほど。

尾根上までまたがる茶畑と、果てなく連なる山地