財界の春闘指針にあたる経団連の「2021年版経営労働政策特別委員会報告」(経労委報告)について、賃金部長による検討・分析の連載「下」を掲載します。((上)はこちら)
最低賃金については、2020年度の中央最低賃金審議会で使用者側が「中小企業の経営が非常に厳しいことや政府から雇用維持の要請がある中で、引き上げはあり得ないことを強く主張した」ことを明らかにし、公益委員が「現行水準を維持することが適当」との目安を提示し、引き上げを据え置いた結果を「きわめて現実的な判断」と評価しました。
そして、引き続くコロナ禍の経済状況と今年度予定されている目安制度のあり方検討を意識し、「最低賃金に限らず、賃金引上げは、生産性向上をベースとした持続的な付加価値の増大に伴って適正に実施するものとし、政府の引き上げ方針ありきでなく、中小零細企業の持続的な生産性向上が重要である」と繰り返しています。夏から審議会が始まる最低賃金の引き上げをけん制する動きです。
コロナ禍でも大企業の内部留保は増え続け、「459兆円」に達しています。
報告では、「ポストコロナを見据えた将来への投資」と述べ、さらなる貯め込みをすすめようとています。このことは、コロナ禍の深刻な雇用・失業危機に直面する労働者の緊迫した実態と相いれないものです。いまこそ内部留保を労働者の賃上げ・底上げや中小企業単価引き上げなどに還元させていくことが求められています。
今、コロナ禍を通じて新自由主義の問題点と限界が明らかとなっています。これまでと同様に企業利益を優先し労働者の生活改善には正面から向き合おうとしない報告を容認することはできません。
ところで、経団連の中西会長は、1月27日に連合の神津会長とオンラインで会談し、「日本の賃金水準がいつの間にか経済協力開発機構(OECD)の中で相当下位になっている」と語りました。大企業の内部留保を労働者の賃金に反映させてこなかったことやこれまでの財界戦略としての労働者の非正規化やフリーランスなどの不安定な働き方によるものの反映であることには全く反省していません。
わたしたちの組合は、神奈川労連などの民間で働く労働者と連帯し、21国民春闘で大幅な賃金引上げ・底上げ、均等待遇や最低賃金の全国一律1500円などの実現で、格差をなくし、8時間働けば誰もが人間らしくくらせる公正な社会への転換を求めています。
同時に、地域経済の活性化と合わせ、その実現のために、コロナ禍だからこそ大企業の社会的責任を果たすよう強く求めていきます。