三浦半島南端の城ヶ島は小さいながら実にユニークな存在だ。細長くて山上部が扁平。南北両サイドの景観は対照的で、三崎側は工場地帯や漁港が占めコンクリートで固められているが、太平洋側は岩礁が連なり大自然の美に溢れている。そして平らな台地上、半分は整備の行き届いた観光公園、もう半分は意外にも畑作地。以上、4つの顔を持っているわけだ。
島内の観光ポイントならよく紹介もされお馴染みだから、ここではマイナーながら絶品のスポットを追ってみよう。まずは城ヶ島大橋、ここは絶対に歩いて渡りたい。洋上のスカイウォークが爽快至極。車で一瞬に渡ってしまうのが如何にももったいない。
島内では、東端の安房崎灯台から南岸に下っての岩礁歩きがイチオシだ。海底にあった地層群が陸地に押し付けられ激しくもまれた岩地形、荒々しい中にも潮溜まりなどホッとする空間が点在。動と静が入り混じったカオスのような世界に浸れる。岩の洞門もあり、底部を波が洗い、背後に白浜が見える様は、美景として実に決まっている。観光ポスターに採用されないのが不思議なくらい。
さてさて城ヶ島は歴とした山でもある。たまたま海上に孤立しているので「○○島」とネーミングされているが、半島側に同様の地形が存在していれば間違いなく「○○山」と名付けられたはず。そもそも実質山なればこそ、本欄で紹介したのである。
ではどこが山頂だろう。これが実は難しい。山頂を特定しにくい山では、三角点(測量の基準点)の所在地を充てるケースが多い。城ヶ島にも台地上にひとつだけ三角点が設置されている。が、これが民地の畑の中。筆者が行った時はたまたま持ち主が耕作中であったので、頼み込んで入れて頂き三角点標石をなでたりできたのだが、そもそも島の最高地点ではないし、平たく見通しも利かないので山頂らしくない。
自然物ではないが、公園中央の第一展望台を疑似山頂と認定しては如何だろう。眺めは文句なく素晴らしい。青海原は南北に、三浦・房総の両半島もよく見えるし、細長い島自体の形状を実感できる。城ヶ山を登頂した気分は存分に味わえよう。
◆おすすめコース
三崎港バス停─城ケ島大橋─安房崎─城ケ島灯台(2時間:初級向け)
※最初の三崎界隈を省いて、城ケ島大橋バス停から歩くのも良い。