LGBTからSOGIへ すべての人の性的指向と性自認を尊重する考え方が始まっています

横浜駅北口から歩くこと数分。東横フラワー緑道からほど近い中層マンションの一室に窓ぎわに掲げられている虹色の旗が見えています。性の多様性と尊厳とを表す連帯のシンボル「レインボーフラッグ」でした。

都会の喧騒を離れた静かなこの部屋がコミュニティスペース「SHIPにじいろキャビン」です。

船の客室(キャビン)のようにプライバシーが保たれ、いろいろな機能(情報を得る、話をする、たずねる、同じ仲間との出会い)がコンパクトにまとめられたコミュニティスペース

運営しているのは認定特定非営利活動法人の「SHIP」。横浜市が性的少数者等支援事業として「フォーラム」と「アートフォーラムあざみ野」で定期的に開催している交流スペースの運営や個別相談を委託している法人です。

困っている人が働きやすい職場は誰にとっても働きやすいはずです

昨今ではよく知られるようになったLGBTという言葉。レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの頭文字からなり、性的少数者を指しています。

「人口の3~5%。佐藤さん、鈴木さん、高橋さんの姓と同じ割合です」

イメージ図はSHIPが発行するリーフレットより転載(以下、同じ)

「広告代理店『電通』の調査では、もっと多いと言われています。調べてみてください。すぐに見つかります」

8・9%と公表されていました。

「ですが、人数の多い少ないに関係なく、『困っている人が必ずいる』ことの理解が大切だと思います」

研修の講師を引き受けるといつも「性別やセクシャリティに関わらず、その人の持っている能力が発揮できる環境が一番大事」だと話すそうです。

「誰にでも、すべての人に人それぞれが持った能力がありますよね。困っている人が働きやすい職場は、誰にとっても働きやすいはずです」と。

多すぎる 性別の「男女分け」

ところで、LGBTの後ろにQが続いているのを見ることも増えました。

「男女どちらでもない性別の立場をとる人やセクシュアリティがよくわからない人もいます。そのQuestioningを含むLGBTQです」

「からだの性、性自認、性的指向には様々な組み合わせがあります。L・G・B・Tの4つのカテゴリに明確に分類できるものではありません」

「自分がどれに属するかは、本人にしかわかりません。同性が好きであっても、ゲイやレズビアンではないと感じている人もいます」

このことは「性的マイノリティ」という私たちの境界線の引き方にも疑問を投げかけています。

カミングアウトを他の人に漏らさないで

「国連やWHOでは、Sexual Orientation(性的指向)とGender Identity(性自認)を指す『SOGI』という言葉が用いられるようになっています」

性的少数者と「そうでない人」という捉え方ではなく、すべての人が持っているあらゆる性的指向と性自認を尊重する概念だそうです。

わざわざカミングアウトしなくても働きやすい環境を整えていくことにもつながる考え方と言えそうです。

「カミングアウトがすべてではありません。上司に話したら、同僚に伝えられてしまって悩む当事者がいます」

情報を知る管理職には職員以上の倫理が求められます。暴露するつもりがなくても、日常会話に気をつけてほしい。

オリンピックをきっかけに啓発が広がるも・・・

「2014年にオリンピック憲章に定める権利および自由に、『性的指向』が追加されました。東京オリンピックのスポンサーになるために、『理解がありますよ』とイメージアップする企業が急速に増えました」

「その流れが、自治体のパートナーシップ制度の広がりにもつながっていきました」

横浜市では、職員のパートナーに係る結婚休暇等も認められるようになりました。ただし、宣誓書受領書(写)か申立書の添付が必要です。

「職場の内実を見れば、性的少数者は、祝い金や休暇などの福利厚生を受けられないことも少なくありません」

五輪憲章に照らすと、国の制度整備も不十分です。

「同性婚の承認・保証法がない日本は、世界では非犯罪化が実現していない国の一つに分類されているのです」