先月2日、カジノ管理委員会が「規則」(案)を公表しました。
IR整備法ではカジノ規制に関わる根幹部分は政省令や新設された「カジノ管理委員会」が定める「規則」(案)に委ねられることになっており、規制の全体像を把握することができない状況が続いていました。
依存症対策は、住民が不安視する最も大きな論点の一つ。横浜市は国による「世界最高水準の(カジノ)規制」を盾に、IRカジノ誘致を推進しています。
ところがこのたび公表されたのは空虚な「世界最高水準」でした。
昨年11月の『広報よこはま』IR特別号が主張するような「国と歩調を合わせ」る「ウィズコロナ、アフターコロナ時代のIR」は、カジノ事業者の思惑をそのまま取り入れた巨大なカジノ建設に他なりません。
地方自治が問われています。
東京ドームよりも広くなるカジノ
これまで国も市もカジノの面積をIR施設全体の3%にすぎないと説明してきました。
実際は、IR整備法施行令でカジノの面積を定めた条文は施行日が「未確定」のままです。仮に3%としても、市の資料からは、カジノの延べ床面積は最大で東京ドームとほぼ同じ4万5千平方メートルと想定されていました。
今回の「規則」(案)によれば面積に算入するのは、賭け事をおこなうテーブルやスロットマシーンの設置面積だけです。カジノ内の通路や階段、エレベーター、エスカレーター、さらには賭け事に使うチップの交換所やバウチャーの換金所すら面積には含めません。カジノは東京ドームよりも広くなりそうです。
入場の規制は緩いまま
IR整備法によるカジノへの入場回数「規制」は、7日間に3回(72時間)、28日間に10日というカジノに入り浸れてしまう実効性のないものでした。
今回の「規則」(案)では、入場者本人または第三者からの申し出による入場回数制限と入場禁止措置の詳細が定められました。
しかし、ギャンブル依存症者本人にはそもそも依存症である自覚がない場合が多く、最低の実施期間は1年以上としつつ、「入場者の意向に沿った期間とする」ことからも「本人の申し出」の有効性には疑わしいものがあります。
「入場者の家族その他の関係者から申し出」がされた場合は、利用者の入場禁止または回数制限を1年以上かつ「カジノ事業者が相当と認める期間」課しますが、「カジノ事業者」が「必要であると認めた場合」。つまりカジノ事業者側が期間も必要性も判断します。依存症者ほど事業者にとっての「お得意様」になりやすく、入場制限をかけることは収益に直結します。はたして厳しく運用されるのでしょうか。
それどころか、入場制限中にカジノ事業者はカジノ利用を勧誘してはならないことになっていますが、その前後にはDMや電話などによる無制限な勧誘が可能です。
カジノ事業者がカネを貸し付け
カジノの「利便性向上」を口実に、顧客が一定額以上をカジノ事業者に預託することでカジノ事業者から賭博資金を借りることのできる「特定金融業務」が問題視されてきました。
政府は「簡単に預託できる額にはせず富裕層に限定」としていました。
しかし、今回の「規則」(案)では預託額はわずか1千万円と定めています。企業経営者や大手企業の従業員ではないわたしたちにも預託可能な金額です。貸金業法の貸付限度額(年収の3分の1)も適用されません。
貸し付けの限度を決めるのはカジノ事業者です。これで、顧客が身を滅ぼすような過剰貸し付けに歯止めがかかるでしょうか?
緩い入場規制やカジノ事業者自身による貸金によって、利用者の8割とも想定される日本国内在住者からカネを巻き上げるカジノ。住民の生存権よりも海外資本の利益を上位に置く構想に見えます。