三浦半島の山と言っても、せいぜい高さ200mクラスの小山の集まり、開発も進み、どんなコースも2時間と係るまい、と思われよう。が、丹沢顔負けの長大な縦走コースが存在する。それが葉山アルプス(三浦アルプスとも言う)の全山踏破だ。「つ」の字の山脈をなぞるように、はじめは東へ、反転して後半は西へと向かうことになる。また一帯の景観は変化に富み、注目スポットが点在していて、長丁場でも飽きさせない。
スタートは阿部倉山から二子山へのルートで(2020年3月3日付け170山で紹介)、三浦エリアでは最もアップダウンの激しい豪快な(きつい)山歩きができる。ただし上二子山までは行政の積極的管理が入っておらず、道標など一部未整備なので注意は必要。
上二子山からは緩やかな傾斜の上り下りが続く。途中に石造りの馬頭観音があり、優しい御顔に癒される。下界にブーンと車の音がしてきたら横横道路が近づいた証拠。やがて上りが急になると、中間地点ともいえる乳頭山に着く。全コースを通じて、東京湾側の眺めが良いのはここだけ。そして、このあたりでコースが反転し進路は西へ。植生がこれまでの人工スギ林から自然林が主体となり、冬場などルートが明るくなる。少し寄り道になるが、茅塚のピークは三浦半島の標高ナンバーツーであり、富士山もよく見える。
この先は見所がポツポツと現れる。◆大桜:主幹4本が存分に四囲に広がり、その名に恥じない。◆細長ピーク:長さ50mで幅が数m、屋根の棟のよう。マテバシイの巨木が一列に整然と並んでいるのが奇観。◆仙元山:ラストの山に当たり、一気に相模湾の眺望が開けるのは、今日一番の感動だ。下山後は、町中を歩き森戸神社まで足を延ばしたい。山歩きの締め括りに海へ出れば、歩き切った感動もひとしおだろう。
コースタイム(所要時間)は山中だけで5時間以上、アップダウンの合計は上り下りとも1000m超。これは長大さで有名な丹沢の大倉尾根の8割以上に該当する。丹沢とは比べ物にならない様な小山の連続だが、まさに塵も積もれば山となる、完歩した方には大いなる勲章を差し上げたい。
◆おすすめコース
逗子・葉山駅─長柄─阿部倉山─乳頭山─仙元山─森戸神社(6時間余り:中級向け)
※夏場は避けたい。山慣れない人は終始ゆっくり歩くのがポイント。
◆参考地図・ガイド ◎「鎌倉&三浦半島 山から海へ30コース」東京新聞