6月9日、中央執行委員会は「2022年度運動方針(案)」を提案しました。6月30日の支部代表者会議を経て、7月14日の中央委員会で決定されると、第76回定期大会の議案になります。方針案の「私たちをとりまく情勢と運動の基調」から作成した討議資料から抜粋して掲載します。
ロシアによるウクライナ侵略の開始から、反戦集会・行動が世界各地で広がっています。
社会のかたちを変えていくものは唯一われらの団結する力だけだ
欧州の大都市では数万人規模のデモが相次いでいます。スペイン、タイ、トルコ、韓国、米国などで集会などが行われ、犠牲者を追悼し、ロシア軍の無差別攻撃に対する怒りの声が上がりました。
日本でも、撤退を求めるデモやパレード・スタンディングなどの取り組みが続いており、中高生による抗議集会や在日外国人が呼びかけたパレードなど、多様な人々が反戦を訴えています。
ロシア国内でも、大規模な反戦デモが行われ、参加者を警察に拘束させ弾圧しても行動は収まらず、インターネットやSNSで反戦メッセージを発信する人たちも現れています。政府系テレビのニュース番組の生放送中に、「戦争反対」と書いた紙を掲げ、「戦争をやめろ」と訴えた女性スタッフもいました。多数の医師・看護師による、戦闘をやめるよう求めたプーチン大統領宛ての公開書簡や、科学者・科学ジャーナリストらによるウクライナ侵略に断固反対する公開書簡も発表されています。
米国「死の商人」は大もうけ
NATO(北大西洋条約機構)とG7(カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、英国、米国)は3月24日、首脳会議を開きました。NATOは、ウクライナ向けに追加の武器支援を打ち出すとともに、ロシア軍が化学・生物兵器を使うおそれに警戒感を示しました。G7はロシアに対する追加制裁を検討する方針を打ち出しました。
ウクライナ侵攻が長期化している要因のひとつには、欧米が続けている軍事支援があります。さらに武器を作っている欧米の軍需産業が巨額なもうけを得て利益を上げていることが指摘されています。 また、米国はロシアの対独戦勝記念日である5月9日に武器支援の迅速化が可能となる「武器貸与法」を成立させロシア軍の攻勢に対抗しています。
こうした「支援」は戦争を収束させるのとは反対に、攻撃を激化させ、戦争を長期化するものです。
西側から露を煽る核同盟
周辺諸国では、NATOへの加盟を支持する世論が高まっています。
フィンランドの首相はNATO加盟の意向を示しており、第2次世界大戦後から続けてきた軍事同盟非加盟の中立政策を転換する可能性があります。スウェーデンの首相も、NATOに加盟する意向を表明しています。
こうした動きに対して、ペスコフ・ロシア大統領報道官は「NATO拡大は欧州の安全を高めることにならない」とけん制しています。さらに、ロシアのメドベージェフ安全保障会議副議長は、「スウェーデンとフィンランドが加盟すれば、ロシアは核兵器や極超音速ミサイルをバルト海に面する領土カリーニングラードに配備することになる」と述べています。
国際的緊張が高まるもと、戦争を平和的に終結させるため、軍事同盟の強化ではなく、国際社会の連帯と英知を結集し、戦争反対の声をさらに広げることが求められます。
代理戦争けしかける帝国主義
5 月 23 日の日米首脳会談では、岸田首相が「日本の防衛力を抜本的に強化し、防衛費の相当な増額を確保する」と表明し、「敵基地攻撃能力」保有の検討も約束しました。共同声明には沖縄の辺野古新基地建設の強行や、鹿児島の馬毛島への空母艦載機離着陸訓練移転実施が盛り込まれました。
バイデン大統領が「台湾有事」での軍事関与に言及しましたが、中国との武力衝突を念頭に南西諸島や沖縄を戦場にする米国の戦略を日本が担うものであり、歴代政権の専守防衛すら放棄する、極めて危険な内容です。
経済安全保障推進法案は、「国家・国民の安全を害する行為を未然に防止するため」として、ⅰ)サプライチェーン(供給網)強化、ⅱ)基幹インフラ強化、ⅲ)官民技術協力の推進、ⅳ)特許非公開の導入―の4本柱を掲げています。その実態は、経済政策を国家安全保障の1つとして外交・防衛政策と並列で掲げ、軍事・経済の両面で日本を米国の世界戦略に組み込むものです。政府が先端技術開発に協力する研究者を募り、多額の国費を投じて官民一体で軍民両用可能な技術開発に取り組むことで、国民の見えない所で軍事研究が進む恐れがあると指摘されています。