50代以上の方なら「山中湖山の家」をご存知だろう。横浜市健康保険組合の宿泊施設なのだが、ユニークなのはかつての小学校の分教場のような施設をそのまま活用していたことだ。長い廊下に流しがあり、旧教室には畳が敷かれているなど、全体配置は学校そのまま。もちろん、食事付きで宿泊できたのだが、合宿所に来たような感じ。
平成の初め頃、山の家に泊って、すぐ背後の山にハイキングしたことがある。山中湖の北岸に当たり、凸凹感のあるミニ山脈が連なっている。小さなピークからピークへ、変化に富んだミニ縦走ができるのだ。この山地の盟主を石割山という。
名前の由来は、山頂南面直下にある大石に由来する。幅も高さも優に10mを超すとてつもなく大きな岩なのだが、ど真ん中で見事なまでに真っ二つに裂けている。まるで真上から、大鉈で真っすぐにたたき割ったように。この大石を御神体として石割神社が鎮座し、それが背後の山名になった。
石の割れ目は通路になっている。時計回りに3回、大石を回ると幸運が授かるという。ユニークなのは人がギリギリで通れるほどの幅であること。「これはダイエットしないと……」と痛感させられる人もいるのでは?ともあれ、山頂まで登らずとも、この大石だけでも訪れる価値は十分ありと断言できる。ただし、登山口からいきなりの400段を超す急な石段には辟易させられるが。
石割山山頂からは富士山が大きい。山地縦走は、その富士山めがけて歩いていくことが何とも心地よい。都合7つの峰を順に上り下りすることになるが、ほぼ中間にある大平山からのパノラマには息を飲む。南面が草原で視界を遮るものがない。正面の富士山はいよいよ大きいし、眼下で180度近くに広がる山中湖の湖水が圧巻なのである。山と湖の壮大なコラボ、数ある富士山の展望台の中でもピカ一といっていいだろう。
オンリーワンの神社参拝とナンバーワンの展望と。これほどのコンビがさほど知られていないのは、山梨県の山の懐の深さゆえか。もし少しずれて神奈川県エリアにあったら、ずっと有名になっていたのでは?
◆おすすめコース
赤い鳥居―石割神社―石割山―大平山―花の都公園(3時間半:初級向け)
※石割神社までなら観光スタイルでもOK。駐車場から往復で1時間ほど。
◆参考地図・ガイド ◎昭文社:山と高原地図32「富士山」