地方公務員災害補償基金横浜支部審査会は2020年9月、図書館司書職員の手指疾患が公務に起因すると認めました。本紙2021年2月15日号に掲載した寄稿「5年がかりの公務災害認定 司書の母指CM関節症」の続編が届きました。「公務災害の清算がようやく完了しました」「作業環境改善も、現在の職場で実現できました」と、うれしい報告です。(編集部)
両親指障害の発生から10年、公務災害の清算がようやく完了しました。
2015年の公務災害(以下「公災」)申請から7年かかって、療養費の自己負担分が公務災害基金横浜支部(以下「公災基金」)から入金され、清算が2022年4月に完了しました。保険点数が労災だと12点のところ、健康保険扱いでは10点にしかならないため、「公災基金が10点のまま清算しようとしていることはおかしい」と医療機関が指摘してくれたおかげで、医療機関窓口で負担していた健康保険の自己負担3割分の支払いが2021年10月からはなくなり、本来の労災の扱いと同じになりました。
本件は当初「公務外」とされ、審査会へ審査請求をしました。このとき教育委員会事務局の当局側は、公災基金に対し▼本をやり取りするルーティン作業は特に嘱託員とアルバイトが行っていた▼美術書など大きな本の棚卸は2人でやっていた▼本の棚卸で1人が1日に出し入れする冊数の統計はない等、事実ではないことを主張する書類を提出していました。わたしは当時の同僚たちの陳述書と書店等での労災認定を「判例」として提出、人間工学が専門の医師及び労基署の労災医員を経験した医師の意見書等を寄せてもらい、逆転。2020年9月に公災認定されました。
性別役割の偏見
公災認定の足かせに
公災だけでなく、労災も含め、2010年代を過ぎてもジェンダーバイアスがかかった認定基準が未だ存在します。
女性が上肢の疾病になると「家事」を理由に認定されにくいのです。昔、水を遠くへ汲みに行ったり、釜に薪をくべ飯や風呂を炊いたりしていた時代の名残です。現代のように各家庭に水道やガスが引かれ、家電製品が普及している環境と当時は同列ではないはずです。にもかかわらず、女性の場合には「家事」が労災認定しない言い訳のように使われます。
わたしについては、月に3度くらいあった夫の遅番のときに炊事をするくらいでした。「家事についてみても、母指に対して過重な負荷を長期間反復継続して加える作業があったと認められる事情は見受けられない」、「本件疾病は中高年女性に時折見られる疾病だとしても、頻繁に発症がみとめられるものではない」と、審査会による裁決書で「家事」起因説は否定されました。繁忙で肉体的負荷の大きかった発災職場である戸塚図書館だけでなく、前職場の中央図書館勤務時代から通勤時間が夫より長く、シフト勤務によって勤務時間終了が20時30分の日があるなど、帰りが遅かったために、家事の多くを夫が担っていました。
審査会会長が定年までフルタイムで働き続けた女性であったことも、現代にふさわしい裁決につながったと思います。審査会をはじめとするあらゆる意思決定機関においてジェンダーバランスがとられることも重要課題です。
座る余裕なく
前かがみで引き寄せる本
2021年4月から図書館の庶務を担当しています。
図書館のカウンターの高さはこれまで72センチ(OAフロアの高さ3センチ分を含む)でした。ウエブ予約がない頃に座って対応していた座位の高さです。座る余裕のない現在の図書館で司書は、しゃがんだり立ったりの連続で、立位のまま前かがみで本をつかんだり引き寄せたり、不自然な格好を繰り返さざるを得ませんでした。
このカウンターを立位対応の88センチに改修するという作業環境改善も、現在の職場で実現できました。OAフロア3センチ分を引いた85センチという高さは、現在のキッチンユニットのワークトップの標準的高さと同じです。
図書館カードの登録作業など座ってパソコン操作をするときに高さを調節できる作業用のOA対応ハイスツールも準備中です。