【第224山】江の島(神奈川県) 60メートル 山とみなしてウォーキング

 これほど庶民に親しまれた島もないだろう。宗教的な修行の場に始まり、江戸時代にはレジャーランドとなり繁盛、そして今日なお人々を引き付けてやまない数々の娯楽・宗教施設が、島内に隈なく配されている。幼少期からの神奈川県民なら、しごく当たり前の観光スポットとして脳裏に刻まれているに違いない。遠足にレジャーに、身近でお手軽な、あまりに当たり前の存在だ。

 江の島はれっきとした山でもある。いわゆる○○山などというネーミングこそないが、周囲から際立つ独立性、高さ。遠く箱根や丹沢の高山から見ても、光る相模湾にきりっと、アクセントのように存在感を発揮している。そんな江の島を、山として視点を変えて捉えなおしてみよう。

 島の裏側まで巡るには、行き帰り2度の山越えが必須だ。往路は時計回りでエスカーのある参道を登り、帰路は島の北西側の道を下ると良い。断層に沿った崩落跡である「山二つ」、関東大震災で隆起した島裏の広大な岩広場、古来名所としての地位が揺るぎない岩屋(海蝕洞)。森に浸るなら山上の、竜神の森のムードがいい。山として自然を愛でるネタに事欠かない。

 では、山ならではの登頂達成の証とするには、どのポイントに立てばよいか。まずは展望灯台(シーキャンドル)のトップ。360度の海、山好きな人なら背後の山々の大パノラマに息をのむ。特に空気の澄んだ秋冬やトワイライトタイムなら絶品だ。そしてもうひとつ、自然地形に限れば、島の標高(60m)を示す三角点付近(灯台直下)よりも、ゲート入口の海寄りにある展望デッキに接続している丘の方が3m程高い。「江の島山頂」の看板を立てるならこちらだろう。ともあれ「山」を意識しつつ歩けば、普段の江の島とは別の風景が見えてくるに違いない。

稲村ヶ崎から夕映えの江の島

 一味プラスするなら稚児ヶ淵から渡船で戻ってしまう手(まるでワープ)もある。島内だけでは歩き足りなければ、県内唯一の五重塔のある龍口寺を参拝し(階段多く登りごたえあり)、江ノ電の軌道部分(電車と車の絡み合いを眺めるのが楽しい)を抜けて、再び海側に出て鎌倉高校前駅まで歩くことをおすすめしたい。

◆おすすめコース
 江の島駅(江ノ電、小田急、モノレール)─江の島─江の島駅─鎌倉高校前駅
(2時間:初級向け)
◆参考地図・ガイド ◎駅や案内所に置いてある江の島マップが便利。