ニッポンのほぼ西南端に位置するのが西表島である。海岸部から山が立ちあがりまるでデコレーションケーキのような島形をなしている。面積は横浜市の3分の2ほどだが、複雑極まりない海岸線と、山と谷が隈なく巡らされていることが相まって、実面積よりずっと広く感じられる。
山は最高でも500mに届かないが、無数の峰をゴツゴツと連ね、洋上から見ると大山脈のようにも見えてくる。いやが上にも登高欲をそそられるのだが、文字通りの原始の山ばかりで、登山ルートらしきものがあるのは最高峰の古見岳とテドゥ山くらい。が、両山ともヤブ漕ぎ必須の上、難敵がゾロゾロ。ハブはともかくとして、ヒルだらけで大ムカデも多いという。そのくせ、山頂は殆ど展望もなく達成感に乏しい。つまりハイリスク&ローリターンの山で、私自身無理して登る気がしなかった次第。
ならば名の聞こえたトレッキングコースで亜熱帯の山のムードを味わいたい。まずはわが国最大のマングローブ林で有名な仲間川沿いの遊歩道だ。かつて島の山岳地帯を縦断する車道が計画されたが、イリオモテヤマネコの発見により中途で中止され、一部開通していた道を遊歩道としたもの。車道規格だから道幅が広く、難敵との距離が取れるのはありがたい。自生する蘭の花や乱舞する多種の蝶に癒されつつゆるゆる登っていくと、立派な展望台に出る。ここから仲間川の蛇行と一帯を埋め尽くす原生林が一望。また、船着き場に下る道もあり、川の高さの目線で見る景色がまたいい。観光ガイドの類ではあまり紹介されておらず、人影が少ないのも原始ムードを味わうには好都合だ。
今一つは沖縄県最長の浦内川の、観光船の終点から歩く滝めぐりコースだ。こちらは観光ルートでもあるのだが、道幅は通常の登山ルート程度、亜熱帯のジャングル気分が満喫できる。中途にはマリュドゥの滝(日本の滝百選)が。コース終点のカンピレーの滝は豪快な滑滝で、水に触れられるのがいい。往路を戻り、迎えの船で戻る。船旅それ自体は、人気の仲間川よりも、距離と変化があり豪快にして爽快。どちらか一方なら浦内川に限る。
◆おすすめコース
仲間川:大富バス停 ︱展望台 ︱ 船着き場 ︱ 大富(3時間)、浦内川:軍艦岩 ︱ 2滝 ︱ 軍艦岩(1時間半)
※どちらも初級向け、運動靴も可
◆参考地図・ガイド◎浦内川:西表島の観光ガイド本など、仲間川林道:国土地理院地形図など