初夏から夏場にかけての近郊の低山は、低い分だけ気温が高く蒸し暑いので全般にきつい。だが発想を変えて、水に親しむ滝めぐりに特化しては如何だろう。県内にも洒水の滝など有名な滝はある。一方、山中の歩きが必要な所となると、一般にはあまり知られていないがびっくりするくらい立派な滝が控えている。中でもたどりやすい、西丹沢最奥に位置する本棚(ほんだな:これで『滝』の意味を含んでいる)、下棚(しもんたな)と、ボウズクリの滝を紹介しよう。
小田急線の新松田駅からバスに乗り終点の西丹沢ビジターセンターへ。丹沢湖を経てぐんぐん山奥に入っていく行程は、ちょっとしたバス旅行の気分だ。ビジターセンターで情報を入手したら、渓流沿いに谷深く入り込んでいく。途中、いくつもの簡易な木橋を渡る。深い森の木陰、清流が運ぶ涼気、滝までの往復の行程がまたいいのだ。
まずは奥に位置する本棚へ。本流を離れ支流に入り数分、ドウドウという轟音と共に堂々たる巨滝が現われる。落差40m、幅もあり実に豪快だ。滝壺まで行きたいところだが、岩上を飛び移る運動能力か、膝まで濡らして流れに分け入る覚悟を要求される。無理して核心に迫らなくてもムードは存分に味わえるだろう。次いで主流を少し戻り、別の支流に入って下棚へ。落差は30mほどだが、本棚に負けず劣らずの雄姿だ。こちらがいいのは、滝壺周りがちょっとした広場になっていること。腰を下ろして休憩がてら、ゆったり滝見物が楽しめる。
ラストのボウズクリの滝は、帰路のバスで向河原バス停で下車、対岸に渡り支流を十数分さかのぼれば現れる。水量は少なめだが2段に分かれ、奥まった位置に粋な感じで水を落としているムードがいい。先の本棚・下棚とは異なる風情が楽しめよう。踏み跡が分かりにくい上に、足場は岩ゴロゴロ、マニア向きレベルではあるのだが。
涼感めぐりと言っても夏は夏。汗をたっぷりかいた後は温泉入浴でさっぱりしたい。お勧めは、山北駅前の「さくらの湯」。入浴後、帰路に御殿場線が利用できるのもメリットだ。
◆おすすめコース
西丹沢ビジターセンター─本棚─下棚─ビジターセンター(2時間半 中級向け)
※降雨中や直後は危険。事前に西丹沢ビジターセンターで情報入手を。車利用も便利。