【第260山】車山1925メートル(長野県)霧ヶ峰高原の最高峰

 車山と聞いてぴんと来ない方でも、霧ヶ峰と聞けば大方の見当はつくだろう。信州中部の広やかな高原帯、その全体を霧ヶ峰と呼び、そこの最高峰が車山なのである。どこかユーモラスな名前は、下界の諏訪方面から見ると大八車に見えることからのネーミングという。

 山麓の白樺湖からリフトが伸びていて、終点から山頂まで僅か2分。最も楽勝で登れる日本百名山としても知られるが、山に感動を求める人なら、ぜひにもリフトの反対側、車山肩から歩いて登りたい。

 肩一帯は霧ヶ峰の核心部に当たり、うねるような緩やかなグリーンが果てしなく続く。かつては初夏にニッコウキスゲの大群落が広大な山肌を濃黄色に染め上げていたが、ここも鹿の食害甚だしく、極めて散発的で貧相なものになってしまっていた。さすがに自然保護上も観光にも拙いと、10年以上前から要所を防護柵で囲って鹿の侵入を防ぐような対策が取られた。

鹿除け電線とニッコウキスゲ、車山

 年々保護エリアが広がり、その成果は絶大、近年ではかなりの範囲で見事な群落が復活している。ただし針金に通電する電気柵と、その電気柵にうっかり人間が触れないための予備ロープ柵と、二重の柵構成になっている。ために花には近接できないし、撮影には柵が邪魔などのジレンマはあるのだが。また復活の成果ゆえに、開花シーズンは観光客が行列をなし、周辺道路は渋滞が甚だしい。

 ハイカーなら花鑑賞はそこそこに、車山を目指すと良い。肩から山頂まで緩やかで優しい道が大きくうねりながら伸びる。草原の山なので展望は終始満点、道がカーブする度に、中央アルプス、南アルプス、富士山と順番に新しい風景が現われ感激、やがて八ヶ岳が堂々とした姿を現せばクライマックス。そして山頂、人は多いが群落地ほどではないし、どこを巡っても一流の中部山岳風景が広がるのが嬉しい。この感動は歩いて登ってこそ。鉄製のスケルトン撮影スポットもありスリル感抜群、他の高山にはないここの名物だ。

 大きな車山だが霧ヶ峰全体からすればほんの一角。ここを起点に道が四通八達しているから、好天ならお気に入りのコースを選んで、高原逍遥を楽しむと良い。

◆おすすめコース
 車山肩─車山(往復1時間半)
※霧ヶ峰の名の通り、ガスに巻かれることも承知の上で。
◆参考地図・ガイド:◎「車山トレッキングマップ」「車山高原散策マップ」等でネット検索を