【第265山】鳳来寺山695メートル(愛知県)修験の岩山は社寺に所縁

 徳川家康を東照大権現として祀った神社が東照宮で、江戸幕府の奨励と、幕府におもねる諸藩の思惑が合致して、全国で500社以上が建てられた。中でも別格はもちろん日光、そして久能山の東照宮だ。その2社と併せて三大東照宮を自称する東照宮が幾つもある。その中の一社が三河国の鳳来山東照宮である。

 街中のありふれた神社クラスのこじんまりした社殿なのだが由来の縁起がいい。家康の両親が当地の鳳来寺で子宝祈願、その後に首尾よく授かった故事に感銘を受けた三代将軍家光の発願により、寺の横に創建されたもの。そんな筋目の良さが、「三大」を名乗る自信につながっているのだろう。鳳来寺そのものは険しい岩山の上部にある古刹で、1400段の石段は源頼朝による寄進という。背後の山全体が鳳来寺山と呼ばれ愛知県のハイカーに人気の山になっている。見どころの多い石段の下から登るのが王道だろうが、幸い寺社のすぐそばまで道路が伸びているので、横着してしまうのも大いにありだろう。

 駐車場からほどなく東照宮の階段下に至るが、参拝は最後に取っておく。次いで鳳来寺の本堂、岩壁を背景にした構図が決まっている。本堂の裏から登山道が始まり、ルートは寺社を起点にぐるりと一回りするように付く。修験道の山だけあって全体に岩がちで、随所に梯子や岩歩きが出てくるが、ゆっくり歩けば初心者でも問題はない。要所要所に岩峰が現れ、格好の展望台になっている。

 やがて鳳来寺山との標識のあるピークに至るが展望はない。周回ルートを少し外れた先に瑠璃山があり、岩峰ですこぶる展望が良く最高峰でもあるので、こちらを山頂とみなしてゆっくり休憩するといいだろう。

鳳来寺本堂と背後の岩壁

 その先も森の中に岩峰が幾つか現れる。中でも鷹打場なる岩のせり出しは南側の眺めが良く、遠く遠州灘方面までが視界に入る。

 周回のラストは東照宮の裏手に下りてくる。鬱蒼としたスギ林の奥に見えてくる朱色の社殿にドキリ、実に神々しい。この感動を味わうために参拝は最後に取っておいたわけだ。一生懸命登山に励んだ者へのご褒美なのである。小さいけれども東照宮ならではの華麗な装飾を堪能したい。

◆おすすめコース
 (2時間30分:中級向け)パークウェイ駐車場─周回ルート時計回り
※山登り無しの観光でも、山岳社寺の独特のムードと展望が愉しめる。
◆参考地図・ガイド:「鳳来寺山登山ルートマップ」で画像検索を